中編 呪いを受けた者たち

 南の森に住んでいるエンデルから、『リーダーがそちらへ行く』という手紙が届き、翌日にはもう本人がルナの小屋へ来た。

「よぉ、お前さん、エクラか? 随分大きくなって……ないな」

 リーダーは小屋へ来るなり、一時的に預かっているシスリアをエクラと間違えた。

「ちょっとリーダーさん、あたしはこっちだってば!」

 エクラ本人が直々に苦情を言うと、リーダーは、かかかと笑ってエクラの肩を強く叩いた。

「そりゃあ悪かった、いい娘になったな、エクラ。じゃあこっちは何だ?」

 今度はルナが苦笑しながら説明をした。

「この子はこの小屋で保護したシスリアだ。王都から家族の迎えが来るから、それまでここにいてもらってるんだよ」

「ほう。で、もう一人はどこだ?」

「俺ならここだよ、リーダーさん」

 さっきからリーダーの目の前に立っていたはずのノクスの存在に、リーダーはようやく気がついた。

「おお、ノクス。随分背が伸びて立派になったな」

「……そういうリーダーさんは、呪い焼けがひどくなってるね」

「ま、色々あったんでな」

 リーダーは改めてルナに視線をやった。

「お前さんも色々あったようだな。無事で何よりだ。さぁ、何年ぶりになるか分からないが、報告会をしようじゃないか」

 ルナたちの報告会に他者の同席はできない。エクラはノクスとシスリアの手を引っ張った。

「あたしたちは地下で勉強の続きをしましょう。ノクス、先生役お願いね」

「……お願いねって……」

「魔法のこと一番分かってるのノクスだもん。シーちゃんに教えてあげてよ」

 若者三人は賑やかに話ながら地下へ下りていった。居間が静かになると、二人は座って話を始めた。

「みんな元気そうで何よりだ。さっそくだが、エンデルから大体話は聞いてきた。本当に襲ってきた人物に心当たりはないのか?」

「ないな。目的も分からない」

「俺も護身の呪いを受けたが、変わったことはなかった」

 ルナはリーダーのシャツから漏れ出ている黒い呪い焼けを見ながら訊ねた。

「リーダー、その呪い焼け、どこまで広がったんだ?」

 彼はにやりと笑い、わざわざソファーから身を乗り出して誇らしげに言った。

「上半身全部だ。後は腕と首と顔がやられればコンプリートだ」

 ルナは呆れたように眉を潜めた。

「そんなに広げてどうする。命知らずだな」

「かかか……それが護身の呪いの醍醐味じゃないか」

「……あんまり毒を強めすぎると、周りにも被害が及ぶぞ」

 ルナに忠告されてもリーダーは楽しげな笑みを止めなかった。

「お前さんは今回の騒動で腹をやられたそうだな」

「お陰様で一週間も意識が飛んだよ」

「かかか……そりゃあ大変だったな。まぁ、命取られなかっただけ良しとしようぜ。一週間も寝込むなんて、お前さんらしくないがな」

「残念ながら、リーダーのような怪物じみた体力は私にはないのでね」

「毒の深化は今回が初めてか?」

「そうだな。こんなに急激なものは初めてだ」

「俺は経験しすぎてもう慣れちまった。深化が初めてというのなら、倒れちまうのも無理はない」

「用心してくれないと困るよ。リーダーに何かあったら私は悲しい」

 リーダーはにやりと笑ってルナを見た。

「随分優しいことを言ってくれるじゃないか。そんなことを言ってくれるのは、お前さんくらいだよ」

 彼は豪快に肩を揺らして笑った。

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