第41話 俺のスローライフ
「おおおおおぉぉぉぉぉ――――っ!」
【黒曜の精霊剣・プリズマノワール】による激烈なる不意の一撃を、
「【精霊騎士】ハルト! 貴様どういうつもりだ!」
しかし【勇者】は【聖剣】でもって強引にはじき返してみせた。
「やるな――!」
それを見て思わず俺の口からは称賛の言葉が漏れ出でる。
それでも今の渾身の一撃による衝撃はかなりのものだった。
「ちっ――!」
【勇者】は舌打ちをすると、いったん俺と距離をとった。
手が軽く
とりあえずしばらくは攻撃してこないだろう。
「よぅベル。まだ生きてるよな? 後は俺が引き受けた。ベルは本陣まで下がって魔王さまとミスティを守っていてくれ」
「あ、ああ、わかった。助かったぜハルト」
【勇者】に対して【黒曜の精霊剣・プリズマノワール】の切っ先を向けながら、
「ハルト様!」
ミスティの期待のこもった弾んだ声と、
「ハルト、なぜ来たのじゃ!?」
対照的に責めるような幼女魔王さまの声が聞こえてきた。
「なぜって言われると、世話になってる魔王さまに助太刀したかったからだな」
とっても単純明快な理由だ。
「ほら、最初にあった時に言っただろ? 元【勇者パーティ】の俺的には、人を助けるのに理由なんて要らないって」
「じゃが
「あー、それなんだけどさ? こっちに来てからずっと2人に面倒見てもらってただろ? だから俺1人で過ごしていても、どうにも
一人で過ごすスローライフはなんか俺の求めるものとは違っていたんだ。
そして俺は気が付いた。
幼女魔王さまとミスティがいて初めて、俺のスローライフは完成するんだってことに!
「――だから連れ戻しに来たんだ。俺がスローライフを満喫するためには、魔王さまとミスティが欠かせないんだよな。つまり俺は魔王さまから要請されたとおりに行動したまでさ」
「な、な、な――」
俺の言葉に魔王さまが絶句した。
「ハルト様――」
その隣ではミスティが頬を紅潮させ、目を潤ませながら俺を見つめてくる。
涙が出そうになるくらいに怖かったんだろうな、きっと。
本当に間に合ってよかった。
「とまぁそう言うわけでだ。言いたいことはあとで全部聞いてやるからさ。だからこの場は黙って俺に預けてくれ」
言うだけ言った俺は、魔王さまの返事を待たずに【勇者】へと向き直った。
「よっ、久しぶりだな。俺が追放されてからだから、2か月ぶりくらいか?」
軽く手を上げて挨拶すると、
「【精霊騎士】ハルト・カミカゼ、風の噂で【南部魔国】にいるとは聞いていたが、まさか本当だったとはね」
【勇者】は眉間にしわを寄せた苦り切った表情で言葉を返してきた。
「色々あって今は魔王さまのところでやっかいになってるんだ。俺は今、魔王さまとミスティと一緒にスローライフをしているからさ。2人に死なれるとすごく困るんだよな」
「いけしゃあしゃあと……! そうやって君はいつも僕の神経を逆なでしてくるんだ……!」
「昔も今もそんなつもりは全くないんだけど」
「どの口が言う! いや――そうだな、ふふっ。いい機会じゃないか、今この場所でなら合法的に君を亡き者にできる」
「怖いこと言うなよ……なぁ【勇者】、昔のよしみで兵を引いてくれるとありがたいんだけど?」
「なにを寝ぼけたことを言っている。これだけの兵を動員して、手柄も立てずにおめおめと帰れるものか。それに――」
勇者がニヤリと
「ハルト、君とは一度白黒はっきりつけたかったんだ。ボクは君のことが前から気に入らなかったからね」
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