第42話 【精霊騎士】と【勇者】
「だから俺は気に
「君の存在そのものが気に
首を傾げた俺に対し、【勇者】がキレ気味にそんなことを言ってくる。
「めちゃくちゃ言うなよな……」
存在そのものが気に障ると言われたのは、さすがに人生ではじめての経験だ。
「だいたい俺の何がそんなに気に
「何がってなにもかもさ! 知っているか? 【勇者】は過去に何十人といる。だが【精霊騎士】はどうだ! 過去に両手で足りるほどしかいないじゃないか!」
「そりゃまぁ精霊使いですら100万人に一人だからな。そこから功績をあげて下級貴族の【騎士】に取り立てられる奴なんてそりゃ少ないだろうよ」
「そんなレアジョブが! なんで僕が【勇者】の時代にいるんだよ! おかしいだろ!」
「そんなこと言われてもな……」
それもう俺はなんにも悪くないじゃないか。
完全な逆恨みだぞ?
「しかも【聖剣】と並ぶ【第一位階】の【黒曜の精霊剣・プリズマノワール】だと!? なんだよそれ、僕を馬鹿にするのもたいがいにしろよ! もっと【勇者】を
「ひとまず俺のことは置いておくとして、それは違うだろ。【勇者】は民のためにいるんだ、お前が崇められるためにあるものじゃない」
「はっ、綺麗ごとを言うな。【勇者】は誰よりもつらく苦しい試練の道を歩む! ならば当然その対価と権利を有するべきだ!」
「それも否定はしないさ。でもそれだけじゃだめなんだ。【勇者】は――」
言いながら俺は、幼女魔王さまとミスティと過ごした様々な日々を、【ゲーゲンパレス】でのスローライフを思い出していた。
そしてそれは俺の中で、一つの確信へと至る――。
「【勇者】はさ、【国民の象徴】にならないといけないんだ。みんなを愛し、みんなに愛される唯一無二の存在――それが【勇者】のあるべき姿なんだ」
けれど、
「笑わせるな、なにが【国民の象徴】だ」
俺の想いは【勇者】には伝わらなかった。
「過去の【勇者】もみんなそうだった。君と同じで
「【勇者】、その考えは間違ってるよ」
「いいや僕が正しい。そしてそのためには、2人の魔王を討伐したという史上初の実績が必要なのさ。だから邪魔をするなハルト! そこをどけ!」
「どかねぇよ、俺は俺の信念と俺のスローライフのために魔王さまを守る」
「交渉決裂だな。もはや君と語ることは何もない――ならばもう、後はこいつで決めるしかないだろう?」
不敵にニヤッと笑うと【勇者】が【聖剣】を構えた。
その身体から聖なる
「いいだろう、望むところだ」
負けじと俺も【黒曜の精霊剣・プリズマノワール】を構え戦闘態勢をとる。
「手加減は抜きだ。行くぞ【精霊騎士】ハルト!」
「かかって来い【勇者】!」
その言葉を皮切りに、俺と【勇者】は互いに駆け出すと真っ正面から激突した!
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