8.班分け
「キムラの云った通り、共通点が分かったからってどうにもならないかもしれない。今は、玄関の鍵を探す方を優先すべきだろ」
シシジョウが云う。重かった空気が多少軽くなり、誰かが確かに……と小さく呟くのが聞こえた。多分、六人組の誰かだろう。
「ばらばらで探すのは何か怖いし、三グループに分かれて手分けしないか。十五人だから、五人ずつ」
便乗して提案してみる。
「私達は六人で動きたいんだけど」
そう云ったのはナカマだ。他の五人もそうだよね、なんて云い合っている。
「男女ばらけた方が良いと思うな。力仕事が要る場合とかもあるかもだし」
今度はサガノだ。六人組は一理あると思ったのか、強く反対出来ない様子だった。
「じゃああたしらは三・三に分かれるよ。それなら良いだろ?」
ワダが云う。
「あたしらはあたしらでどう別れるか相談するから、あとのチーム分けはそっちで宜しく」
そう続けると、残りの五人を連れて教室の隅の方へ移動してしまった。
「あたしは誰と一緒でも良いけど、キョウコに服を着せてやりたい。出来れば女に手伝って欲しいんだけど」
そう云いながらサガノの視線がスドウに向く。
「あ、あの……私手伝います。チーム分けは……その、お任せします……」
「ありがと。じゃあ取り敢えずあたしらチームって事で、あとはあんたらに任せるわ」
行こ、とサガノがスドウの手を取って廊下に出て行った。
残されたのは男達。
「俺とユウキは一緒で良いよな。あー、イトウ達のグループが分かれたどっちかと組めば丁度五人だ」
「お、おう。そうだな」
俺に異論は無い。シシジョウも特に何も云わない。
「俺らも三人一緒の方が安心出来るよな。あのサガノってのとスドウってのと組めば丁度か」
「確かに」
「うーん、でも、あのスドウってのとコミュニケーション取るの、ちょっと大変そうだよな」
ササキ、サトウ、サノの順。それもそうだな、と云い合って、困った様子を見せる。
「シシジョウは俺と一緒で良いよな。誰と組みたいとかあるか」
小声で隣に話を振ってみる。シシジョウは面倒臭そうな顔をしながら、ゆるゆると首を左右に振った。誰とでも良い、と云う事だろう。俺と一緒が嫌では無い、と思う。
「あ、じゃあ俺は別にスドウと一緒でも良いから、シシジョウ、サカノキ、一緒に組まねえ?」
不意に声をかけられて一瞬たじろぐ。ササキの言葉だった。
「俺は構わないけど……」
「……好きにしろ」
「じゃ、チーム分けは決まりだな。宜しくな、シシジョウ、サカノキ」
ササキが俺とシシジョウの間に入って肩に腕を置いてきた。
「ああ、宜しく」
がたいに似合わず人懐っこい様子にほっとしながら返す。
シシジョウは顔に鬱陶しい、と書きながらその腕からするりと逃れてしまった。俺とササキは顔を見合わせて苦笑いを零した。
そうこうしている内にサガノとスドウが戻って来る。
「チーム分け終わった?」
「そっちの女子チームはちょっと揉めてるみたいだけど、他は決まったよ。二人はシゲルと、あとシシジョウとサカノキと一緒ね」
問うサガノと、答えるのはサノだ。
……サ行の人間が多いのは、偶々だろうか。少し気になったが、考えても分からないので忘れる事とする。
その代わりに六人組に目を向けると、サノの云う通りまだグループ分けが終わっていない様だった。
数分経って、漸く六人がこっちに戻って来る。
「あたしとリョウ、ミホがキムラとミヤジマと組むよ」
ワダが結果を報告する。
と云う事はイトウとキリシマとタジマがサトウとサノと組むと云う事だ。
「丁度三階建てみたいだし、俺らで一階見て来るから、あとは二階と三階頼んで良いか」
「え……あたし三階は嫌だよ。だって……」
イトウが云う。多分、死体があるから、だろう。その視線はちらちらと遠慮気味にサガノに向けられた。俺の提案に乗るなら彼女達は二階だ。
「俺だって三階は嫌だね」
キムラが云う。ミヤジマもこくこくと頷いた。
「……俺達が三階で良いだろう。あとは適当にやってくれ」
シシジョウが俺の提案を却下して新しい提案をした。
「じゃあ俺達が二階だ。良いだろ」
キムラが云う。
「俺達は一階で良いかな」
サノが同じグループの連中に問う。反対意見は上がらなかった。
「じゃあ、そう云う事で。一通り調べたら……あー、一階の生徒用玄関前に集合で良いよな」
ここに戻って来ると、死体を目にしなければならない。それは多分、皆避けたいだろう。それぞれに頷いてくれたので、一旦散会となった。
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