7.自己紹介・2

「……あたしはイトウユカ。二十五。銀行員やってる。天秤座のAB型。出身はI市。趣味は特に無いかな」

 そう云った彼女は濃いグレーのロングスカートに明るいグレーのアウター、中に着てる服は黒のハイネックだ。髪は肩までで色は茶。シェル素材っぽいシンプルなピアスを付けている。靴は白のスニーカーで少し厚底のやつだ。

「私キリシマアカネ。二十五歳。雑誌編集者。水瓶座でA型。出身はI市。趣味はアクセサリー集め」

 続いて云うのは茶色っぽいタートルネックの長袖にタイトなジーンズを履いた女だ。靴は黒のミュール。耳にはポストタイプのピアスをしていて、紫色の石がきらりと光っている。右手の薬指にはシルバーカラーの指輪がはまっていて、良く見るとそれにも紫色の石が付いていた。手首にはゴールドカラーのブレスレット。これは紫色の石では無くブルーブラックの飾りが付いている。明るい茶髪。

「ワダマナミ。二十五歳で事務業。蟹座のB型、出身は同じくI市。趣味は走る事」

 ショートカットの女が云う。趣味から連想するスポーティーなタイプそのもので、少し日に焼けた肌をしていた。髪色は暗い茶のショート。グレーのチノパンを履いていてアウターは薄手の黒いコーチジャケット、中には淡いイエローの服を着ている。靴は黒いスニーカーで透明な石が付いたポストタイプのピアスをしていた。

「私はタジマユウコ。二十六歳の専業主婦。牡牛座でO型、出身は私もI市だよ。趣味は……子供の服を作る事かな。子供って成長早いからすぐ服が合わなくなっちゃって、買うより作る方が安いし」

 と云うのは長い黒髪をポニーテールにした女。白い長袖の服にジーンズと云うシンプルな格好をしている。アクセサリーの類は結婚指輪くらいで、恐らくプラチナ製だろう。靴は履き古した青っぽいスニーカーだ。

「ナカマリョウ。二十五で仕事はチーママ。獅子座のB型で出身はI市。趣味はエステとかネイルサロンかな」

 茶色いソバージュの女が云う。長さは肩に触れないくらいだが、髪のウェーブが取れればもう少し長いんだろう。耳にしているのはピアスではなくイヤリングで、きらきらと派手な飾りが揺れていた。格好は白のスーツで膝上十センチくらいのスカートだ。中に着ている服は黒地に白の水玉。靴はヒールの高い赤で手首には華奢な腕時計が見える。

「アベミホだよ。二十五歳の保育士。蠍座のA型。出身は私もI市。趣味は……折り紙かなあ。仕事で良く折るんだけど、何だか楽しくなっちゃって。恐竜とかも折れるんだよ」

 何となく口調が幼い様な、子供に対する様な調子に感じられた。職業病と云うやつだろうか。格好はベージュのチノパンに白の長袖。オフだったのかイヤリングをしている。髪は肩に触れるくらいの茶髪で靴はピンクのスニーカーだ。オレンジのバンドが目立つ腕時計をしている。

「キムラダイチだ。二十五歳でラジオの仕事してる。水瓶座でA型。M市出身。趣味は……特に無え」

 二人組の男の内、恐らく立場が上だろう方が云った。カーキのチノパンに白の長袖を着ていてごついシルバーリングを幾つかしている。足元は靴ではなくサンダルを履いていて、右手首に着けている腕時計もかなりごつい物だった。無精髭があるが不潔な感じは無く、ファッションとして成立している。髪は茶色。背が高いがちょっと猫背の様だ。ただ、腕っぷしは強そうに見える。

「俺はミヤジマユウキ。二十五歳で同じくラジオの仕事してる。魚座のB型でM市出身。趣味は酒を飲む事だな」

 趣味の所為か声が少し焼けた感じで実年齢より少し老けて聞こえる。ジーンズに黒い長袖を着ていて、シルバーリングをこいつは一つ着けていた。靴はオレンジのスニーカー。がたいは良いが、少し気弱そうにも見える。

 ここまで滞り無く自己紹介が進んだが、最後の一人が中々話し始めない。どうも所謂コミュ障と云う感じらしく、もじもじして顔を上げたり下げたり忙しい。何人かが苛々して来た頃、漸く彼女は口を開いた。

「す、スドウユキです……二十五歳で、在宅業をしています……。山羊座のA型で、えっと、B市の出身です……。しゅ、趣味は……ハンドメイド、です……」

 彼女の声は段々と小さくなっていき、最後は辛うじて聞こえるくらいだった。黒のロングスカートにアイボリーの長袖、少し底の厚い茶色のサンダルを履いている。黒い髪を左右の耳の後ろ辺りで結っており、黒いフレームの地味な眼鏡をかけていた。アクセサリーの類は見えない。

 全員、装飾品は身に着けているが、荷物は取り上げられたのか手ぶらだった。

「……で、自己紹介は終わった訳だけど。俺は夜道で殴られて気付いたらここだった。みんなはどう?」

 訊いてみると皆似たり寄ったりで、タジマとスドウだけは自宅に来客があり玄関で応答した所を拉致られたそうだ。

 しんとする。

「……明らかに、あたしらを狙っての事だよね」

 サガノの言葉に、一層空気が重くなった。

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