6.自己紹介・1
「共通点が分かったからって何だってんだよ。そいつが何にも知らないなら、もうここに用は無い。俺らは俺らで勝手にやるんで」
二人組の一人、先にシシジョウに絡んだ男が云った。そして二人連れだって教室を出て行こうとする。
「ちょ、ちょっと待てよ。状況が状況なんだから、協力した方が良いと思うんだけど」
「そうだよ。そいつの云う通り、勝手に動かない方が良いよ」
キョウコの連れが援護してくれる。見ると、服一式を持っていた。……キョウコの服、か。
男二人は足を止めると俺達全員の顔を見回し、それから顔を見合わせ何やらアイコンタクトをすると、シシジョウに絡んだ方が溜息を吐いた。
「分かったよ。じゃあ云い出しっぺが先ず自己紹介しろ」
「あ、ああ……俺はサカノキアマネ。歳は二十五、今年で二十六になる。仕事は普通の会社員。乙女座のAB型。出身はB市。趣味はネットとゲームと漫画」
他に云うべき事があるだろうか。自己紹介と云ってぱっと思い付くのはこの辺だ。
「丁度輪になってるし、このまま時計回りで良いよな。次はあんただぜ」
隣に居たシシジョウに目を向ける。シシジョウは面倒臭そうに髪を耳の後ろに引っ掛けてから口を開いた。
「シシジョウドウシ。歳は二十五。在宅ワーカー。獅子座のAB型。出身はB市。趣味は散歩」
「ドウシ? 変な名前だな」
二人組の男の一人が小さく笑って云う。どうも先にシシジョウに絡んだ方がリーダーで、今喋ったもう一人はその子分と云うか、立場的には下の様に見える。
シシジョウは気怠げにそいつを睨むと、男は笑いを引っ込めて咳払いをした。
「次は俺か。俺はササキシゲル。歳はもうすぐ二十六。建築現場で働いてる。双子座のB型。出身はB市で、趣味はウインタースポーツ」
三人組の男の一人が云う。ツーブロックの金髪でがたいが良い。肌は日に焼けていて、職業と趣味には納得と云う感じである。黒いタンクトップの上にデニム地のシャツを着て下は褪せたジーンズ。踝までのグレーの靴下に踵の潰れた青いスニーカーを履いている。
「ぼ、僕はサトウタダオミ。同じくもうすぐ二十六。SEやってる。蟹座のO型。出身はK市。趣味はネットと漫画と、あと山登り。……大して高い山に登る訳じゃないけど」
はは、と力無く笑うのは三人組のもう一人。暗めの茶髪で少し太っており眼鏡をかけている。少し気が弱そうに見えるのは偏見だろうか。仕事帰りだったのかグレーのスーツを着ている。靴は茶の革靴だ。
今の所、俺達の共通点は年齢だが、それじゃあシシジョウも一緒になってしまう。出身市かとも思ったが、サトウがK市でシシジョウがB市では仲間外れがシシジョウではなくサトウになってしまう。
「俺はサノカケル。歳はこの間二十六になった。仕事は営業。牡牛座のA型。出身はB市。趣味は料理」
三人組の最後の一人が云った。こちらスーツを着ている。色はチャコールグレー。中肉中背と云った感じで、こっちの革靴は黒。眼鏡もかけているがサトウのかける黒縁眼鏡とは違い、白っぽい何だかお洒落な眼鏡だ。
三人共、仲が良さそうだが趣味も出身地も仕事もばらばらだ。学生時代の友人、とかだろうか。同じ世代の様だし。みんなサから名前が始まるから、出席番号が近くて友人になったとか、有り得そうだ。
「次はあたしだね。あたしはサガノユイ。歳は二十六で仕事はホステス。牡牛座のB型。出身はM市。趣味はネイルと、服を買う事」
宜しく~、と、手をひらりとさせてキョウコの連れは云った。確かにその爪は綺麗にデコレーションされており、傷んだ長髪は明るい茶色。服装もやや派手で、オレンジがかった赤いワンピースは肩の部分がひらひらとしておりバストが強調されるラインをしている。丈は膝より十センチ程度上だ。靴は黒のハイヒール、と云うやつだろうか。
次はあんたらだ、とでも云う様に、一塊になっている女六人へと、サガノの視線が向いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます