5.仲間外れ

「服があった!?」

 六人で固まって居た女達の一人が凄い勢いで食いついてきた。

「あ、ああ。一階体育館前の更衣室ってプレートが付いたとこに」

 たじろぎながら答えると、六人は行こ行こ、と仲間内で云って足早に教室を出て行った。取り残された者達はぽかんとしていたが、二人組の男達が出て行き、キョウコと云い争っていた三人組の男達も出て行き、最後にキョウコの連れが出て行って、あとには服を着た俺とシシジョウ、隅っこで座り込んでいる女が残った。そいつは黒い髪を左右の耳の裏で結っており眼鏡をかけた、地味だけどまあ可愛い顔立ちをしている。流石に裸の女をじろじろ見る訳にもいかないのでそれ以上の観察はしなかったが、顔を逸らして

「あんたは行かないの」

 と声をかける事にした。

 女はおどおどとした様子ながらこちらを窺っている様だった。

「……い、きます」

 そう答える声がして、女は立ち上がりそそくさと教室を出て行った。足音から察するに、他の奴らとは逆方向から向かった様だった。擦れ違いたくないのだろう。全裸だもんな。

 体感二十分と云ったところか、全員が最初の教室に再び集まった。誰かしら勝手な行動をするのではないかと思っていたので意外だった。多分、皆心細いんだろう。

「で、俺達はこれからどうしたら良いんだよ」

 二人組の片方が云う。それはシシジョウに向けての言葉だった。

 シシジョウの片眉が上がる。

「何故俺に訊く」

 やや不機嫌そうな声。

「お前、何か知ってんじゃないのかよ」

 二人組のもう一人が云った。

 シシジョウはクソデカ溜息を吐く。それが他の奴らを苛立たせた様だった。が、シシジョウは意に介した様子が無い。

「俺は恐らく探偵役としてここに呼ばれた。あの男が云っていた仲間外れは多分俺。つまりお前らは"仲間"だって事になる。……俺からしたら、俺以外全員信用ならない」

「探偵役?」

 俺が問うと、シシジョウは面倒臭そうに視線だけを俺に向けて話し出した。

「ここに来る前の最後の記憶で、俺は見知らぬ男とバーで水平思考ゲーム、所謂ウミガメのスープをしていた。そして寝落ちる寸前、その男が云ったんだ。探偵役がどうのって。……思うにいつもなら平気な酒量だった。多分何か盛られたんだろ」

 あいつがスピーカーの男だな、とも云う。

「すいへーしこうゲームって何だ」

 三人組の一人が問う。

「……それは今どうでも良いだろ。兎に角、脱出するだけなら探偵役なんて要らない。あの男は俺に何かを暴くと云う役目を期待している。多分、俺達が裸だった事にも理由がある。それから……さっきも云ったが多分俺が"仲間外れ"だ。お前らには何か共通点があると思う」

 シシジョウの言葉に小さなどよめきが起こる。

「共通点って……」

 キョウコの連れが呟く。

「年齢が同じくらい……はあんたも一緒か」

 六人組の女の一人が云う。

「取り敢えず、自己紹介しね? そしたら共通点も分かるかもだし」

 空気を変えるべく、俺はそう提案した。

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