家の床に空いた穴
小学校の低学年の頃、私は特に虚言癖の強い子供だった。その後も話を盛ってしまったり、テキトーにボケのつもりで言ったものが信用されてしまったりすることはあるのだが、それ以上にあの頃はただ嘘を語っていた。
理由は、ヴァンパイアになりたかった理由とそう変わらない。まわりの友達が旅行や他さまざまな体験を語っていて羨ましかったという、つまらない見栄である。
当時、私は宗田理さんの『僕らシリーズ』にドハマりしており、『七日間戦争』から『ラストサマー』まで、加えて『反面教師』なども買い、『新・僕らシリーズ』も読んでいた。『2年A組探偵局』も、読破した。そんな僕は、当時英治たちに憧れていたのだ。さまざまな武器や仕掛けで悪や大人たちに立ち向かっていく姿はカッコよかった。だから僕は、彼らのやっていたことをまさしく自分の体験談かのように語ったこともあった。実際に彼らの真似事をするには私の家は現代風だったから、そうして語ることで私もそんな気分になり彼らのように大人に反抗し、カッコいい青年でいられた。
そんな折、ある友人から言われたのである。
「え、北見くんってボロ家に住んでるんじゃないの?」
「え、なんで?」
「だって、北見くん、前に家の床剥がしたとか言ってたじゃん。だから、ボロ家なのかなって」
それから、私は自分の発言に少しばかり気を遣うようになった。恥ずべき、子供の頃の経験である。
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