牛と豚
私は豚と牛の区別がいまだについていない。馬鹿にされるかもしれないが、仕方ない。事実として、区別がついていないのだ。しかし、その違いを知らなければ殺されるという訳でもない。そんな知識がなくとも十分に生きていける。実際に、そうして生きてきたのだから。
ビーフが牛、ポークが豚、という知識はある。しかし、食べたときにこれが何の肉か、と問われたなら私の選択肢はどこまでいっても二択だ。
とんかつは豚。牛タンは牛。しかし、わざわざ牛タンというくらいなのだからタンは他の動物の舌も指すのだろうか。ホルモンは、もう自信がない。内臓であることは知っているが、牛だろうか。消化器官が長く胃を複数持つ牛の方が、可能性は高そうだ。シャトーブリアンは、名前だけ知っている。ただの肉なのに希少部位という理由で値段がただ高くなり、得られるカロリーに対する値段効率が悪すぎる食べ物。そんなものを食べる機会があるのなら、私はその代わりにスーパーで安い肉を少し多めに買い、余ったお金で趣味に費やす。
申し訳ないが、私は特に食に興味がないのである。なにかカロリーを取ることができ、少なく済むのであれば私はそれがいい。食は、私のなかではただの栄養補給でしかないのである。あまり食に対して楽しむ、という感覚を持ち合わせていない。もちろん美味しいものを食べたなら食べてよかった、という感情を持つことはあるが、自分からその感覚を求めて能動的に行動することはない。
可能ならば私は点滴でいい。しかし点滴では栄養分を取っているはずなのに痩せていくので、点滴の技術向上に期待するばかりだが、この一食でこの一粒で元気全開にならなくとも普通に生活するだけの栄養が取れるような、そんなアイテムが欲しい。
そうすれば、牛と豚の区別がつかないことなど、むしろ普通になるだろう。そうなってほしいな、と私は願っている。
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