一番好きな色は

 好きな色は、黒。今の私であれば、黒と答える。


 特に、理由はない。好きな色に、なにか理由などはあるものなのだろうか。


 私の部屋のクローゼットに目を移せば黒、灰色、白しかない。なんとも、モノトーンに支配されている。これらの服を選んできているのは、もちろん好みである。ただし、白い服に関しては、服がすべて黒だとたいてい奇異の目で見られるので着ているに過ぎない。白は、汚れが目立つので好きではない。


 黒が好きな理由ではないが、小さな頃に読んだ絵本の、黒いクレヨンのお話はいまだに、よく覚えている。タイトルは覚えていなかったが、調べてみたら「くれよんのくろくん」というらしい。ボールペンのお兄さんが削った時、子供ながらに感動した。読んだことがない人は、読んでみてもいいのではないだろうか。


 好きな色という基準で考えるのは苦手だが、嫌いな色という観点であればまだ、いくつかこだわりがある。先に少し書いたが、白は好きではない。汚れが目立つというのもそうだが、あの色は光り輝いているように見える。あの色には、嫌悪感がある。ちなみに、腹は黒い人より白い人が好きである。私の腹は白いと信じていたが、どうやらわずかに黒が混じっているらしいことを最近知った。


 主張の激しい濃い色は好きではない。赤、青など。ではなぜ黒が好きかと言えば、黒は私を夜闇に包んで隠してくれるからだろう、と他人事のように私は解釈している。厨二病と言われそうだが、まぁ否定はしない。それを厨二病と呼ぶのなら、私は十年来の厨二病だ。末期であろうし、すでに全身に転移しており、処置の施しようはない。


 昔は、水色や桃色の、パステルカラー系と言えばいいのか、明るく薄い色が好きだった。小学校の頃の話だが、そうだった。当時いつも、好きな色は水色と答えていた。いつから黒に変わったのかは、特に分からない。しかし、その頃から黒い服が好きである。ということは、少しずつ気持ちの変化があったのだろう。


 学生時代の団の色のなかでは、青が好きである。どれも嫌いだから、強いて、という感じではあるのだけれど。そういえば学生時代には赤と青しか経験がない。白、黄、緑にはなったことがない。思い出補正も込みで、やはりこのなかでは青が好きである。中高と文化部を通した私には、思い出、という思い出もないのだけれど。


 黒が好きだ。黒はいい。他の色全てを覆い隠せる。黒に囲まれていたい。ただし、黒いかかわりと黒い話に関しては、私も白、である。

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