第10戦 中学から付き合い




「おい。どうゆう事だ説明しろ」


昼休み。

珍しく飯に誘われた俺は澤田から拷問を受けていた。


「どうゆう事も、そのままの意味だよ」


「まじでお前桜井さんとご近所になったのか!?」


「あぁ、たまたまな」


「変われこのクソ野郎!」


「痛てぇ!まじでぶん殴んなや!」


怒気を放つ澤田は割と強めのグーで俺の腕を殴ってきた。

力加減というものを考えて欲しい。


「なんでお前なんかが……」


「恋愛の神様は俺を見ていたってことさ」


「死ねごら!」


「だからガチで殴んな!」


ぐぎぎと歯を鳴らす澤田。

まぁ、羨ましい気持ちも分からんでもない。

俺がもし普通の男子だったら舞い上がってるしな。

俺からしては最悪だが。

考えてみろ。いくら可愛いからと言って自分が振った相手が隣に住むことになるんだぜ。気まずいどころの騒ぎじゃないだろ。


「まぁいいから飯食え。昼休み終わるぞ」


「食えるか!」


とか言いつつ卵焼きを口に放り込む澤田。

きっと半分以上ヤケクソだろうな。

こいつに俺が桜井を振ったって言ったら俺どうなるんだろう。

多分死ぬな。

まぁ言わないけど。



「まぁでも、お前が隣だから安心だよ」


「ん?どうゆう事だ?」


「お前、まだ若奈のこと好きだろ?」


「おい。傷をえぐるな」


澤田は知っている。

俺が若月若奈を好きだったことを。

こいつとは一応同じ中学で、当たり前ながら若奈も同じだった。

だからこいつとは中学からの付き合いで、その時からいろいろとお世話になっているのだ。

特に、若奈のこととかな。


「んで、まだ好きなの?」


「いや、振られたんだからとっくに諦めてるよ」


「まじで?桜井さんやばいじゃん!」


「大丈夫だ。俺恋愛する気ないから」


「んじゃまだダメじゃねぇか」


そう言ってははっと笑う澤田。

こいつは、恋愛に関してはひねくれてる俺を受け止めてくれる良い奴だ。

俺は友達はいるけど基本的に恋愛関係の話になると黙り込むからな。


「今でも覚えてるぜ」


「何がだよ」


「お前が振られて、俺に泣きついてきたこと」


「殴るぞ」


「すいません」


余計なことを言う澤田を拳で脅す俺。

てか、こいつさっきめちゃくちゃ殴ってきたからやり返していいよな。

まぁ中学時代は蹴飛ばしてたけどな。

何せ俺は中学時代、サッカーをしていたから手より先に足が出る。

サッカーをやっている連中には分かるだろ?

バレーとか手じゃなくて足でボール返したくなるよな。

それで俺は球技大会MVPをとったことがある。

まぁ、中学時代の話だけどな。


話を現実に戻そう。


今はお互い、飯は食い終わってベンチ座り込んでいる。

春の優しい風が吹くこの場所は、桜井と飯を食ってからお気に入りになってしまった。

こうして男ふたりで飯を食うのも悪くないな。


「なぁ、1つ聞いていいか」


珍しく澤田が真剣な表情で尋ねてくる。

これはただ事ではない。

何かぶっ込んで来る時の顔だ。

俺は覚悟を決めて返す。


「なんだよ」


すると

澤田は真剣な表情をそのままに言った。




「お前、なんでサッカーやめたんだよ」




やっぱり、気になってたか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る