第8戦 懐かしむ2人の朝
設定変更致しました。
幼馴染は存命です。
「急すぎんだよ……あのバカ…」
あの後、特に話したりはせず、俺はベッドで頭を抱えていた。
「引っ越すって言ってたけどこれは違うだろ…」
俺の隣に美少女が来た。
桜井が帰ったあと、姉貴は「願いが叶って良かったじゃない!」とか言ってたけどそれとこれとは別だ。
「はぁ…。これからどうなることやら…」
家が隣だから当然、交流も多少はあるだろうし、ましてや桜井だ。絶対何か作戦を考えて、俺にアタックしてくるはずだ。
先が思いやられる。
別に嫌って程ではない。むしろ、知り合いと家が隣というのはいい事だ。しかし、恋愛をしていけない俺からすれば、かなりきつい。俺は桜井の好意から背けなければならない。そんなことがずっと続くようであれば、
俺は桜井の好意から背ける罪悪感と、若奈への罪悪感で押しつぶされそうだ。
「あー考えても拉致があかねぇ。寝るか」
俺は考えるのが疲れたので、今日は寝ることにした。
◆◇◆◇
朝。
目覚めた俺は洗面所で歯磨きをしていた。
「おはよ姉貴」
「おはー」
姉貴もきたので軽く挨拶を交わす。
お互い寝起きなので、朝からボケをかます元気はない。
俺は歯ブラシを洗って、水で口をすすぐ。
姉貴は寝癖をとっている。
「姉貴寝癖すごいよな」
「寝癖放置のあんたに言われたくないわ」
「いいんだよ俺は。見せる相手東京だし」
「いいの?お隣さんに見せなくて」
「ふん。桜井はいいんだよ」
俺はそう言い放ち、朝食を食べるためリビングに向かう。
同時に着いてきた姉貴はなぜかキョトンとしている。
そして、しばらくしてから
何かを理解してふふふとニヤついた。
「あんた、桜井さんと知り合いなの?」
………しまった。やってしまった。
そうだった。まだ家族には桜井とクラスメイトということを言ってなかったんだった!
ちくしょう墓穴掘った!よりによって姉貴とは!めんどくさいことになる!
俺は、とりあえず2人分のトーストをセットする。行動を起こして返事を遅らせる作戦。とはいえ正直に言うんだが。
両親揃って朝は早いのでいつも自分で朝飯は用意する。
「ま、まぁな。ただのクラスメイトだけどな」
「にしてはずいぶんと親しげな感じだけど」
「そんなことはない。桜井なんて美人と話したこともないね」
椅子に座っている姉貴はふむ、と少し考えてから言った。
「まぁ、それもそうね!あんたがあんな子とは関係もたないものね」
「?ずいぶんと理解が早いな。姉貴のことだから俺と桜井くっつけるー!とか言いそうなのに」
姉貴はそれを聞くと控えめにわははと笑って言う。
「あんたには若奈ちゃんがいるでしょ!そんな酷なことしないわよ!」
………おかしい。
今日の姉貴はおかしいぞ。
いつもなら「あんたが望むならしてあげましょう!」とか言うくせに、今日は理解が早い。どうした姉貴。
俺はいつもと違う姉貴に若干恐怖しつつ、聞く。
「今日の姉貴どうした?いつもよりバカじゃないんだけど。怖い」
「失礼ね。ちゃんとわきまえるところはわきまえるわよ」
「人のエロ本鍋敷きに使ってた人が何言ってんだ」
「私というエロがここにあるのにエロ本なんてものを買う方が悪い!」
「自分でエロって認めんなよ……」
やはりいつも通りっぽいな。
俺は焼きあがった2人分のトーストを皿に乗っけて机に運ぶ。
「ほい」
「お、ありがとー!さすが弟!」
もう元気満々な姉貴はそのトーストにかじりつく。この人、人の色恋沙汰聞くとすぐ元気出すよな。
俺もトーストにかじりつく。
しばらくはお互い無言で、トーストのザクッという音しかしない。
やがて、
ふと、姉貴がどこか懐かしげな顔で口を開いた。
「昔はここに若奈ちゃんも居たよね〜」
まるで独り言のように言う姉貴。
その隣には誰も座っていない空いた椅子。
昔はここに若奈がいた。
俺はそこを見つめながら答えた。
「あぁ。懐かしいな」
トーストを食べ終えた姉貴も頬杖をつきながらそこを見つめる。
「あの子、元気にしてるかな」
「母親じゃねえんだから」
「あははっ、まぁ私も若奈ちゃん好きだったからね」
「仲良かったもんな。姉貴と若奈」
「うん。まぁ、あんたたちには勝てないけどね」
「それはそうだな」
「よっ!遠距離恋愛!」
「うっせ。飯食ったならいくぞ」
俺は流しに皿を持っていく。
久しぶりに思い出したこの感じ。
やはり俺は、
まだ恋愛出来そうにないな。
「あと見る専キャラつまらんからやめた方がいいよー!」
「うるせぇ余計なお世話だ!」
玄関で大声で余計なことを言っている姉貴に俺は大声で言い返し、玄関へ向かった。
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