第2戦 恋愛相談部


桜井に宣戦布告をされた翌日。

俺はいつものように昼休みを利用して読書ラノベタイムに浸っていた。


「北山くん!」


ちっ、早速きたか。

俺が顔をあげるとそこには絶世の美少女こと、桜井三咲。今日も懲りずに俺を落としに来たらしい。

俺と目線を合わせるようにしゃがむ桜井。

通常の男子では太刀打ち出来ず、撃沈するであろう。

が、俺は違う。

完全無双の恋愛拒絶士。

そんなことでは撃沈することはない。

俺は桜井に返す。


「よお、何か作戦は立てたのか?」


すると桜井はヒロインモードを解除し、戦闘モードにキャラ変をした。


「ふふっ、当たり前でしょ?ただ今はしないわよ。あなたの読書タイムを邪魔したら嫌われちゃうもの」


「ふっ、いい心がけだな。楽しみにしておくよ」


「そっちこそ覚悟していなさい!」


そう言って去っていく桜井。

俺は桜井を見届けて、またラノベに浸った。


◇◆◇◆


放課後

俺が初戦で恋愛見る専と言ったのを覚えているか?

そう、俺は見る専。

細かく言えば2つ、俺は見ている。

1つはライトノベル。

恋愛をしないだけで、恋愛が嫌いなわけじゃない。むしろ好きな方に当たる。

そんな中のラブコメライトノベルはかなり好きだ。

俺は、その数々のラブコメの恋愛を”見て”いる。



そしてもうひとつ、

それは


「あっ!部長じゃないですかー!」


「うっす部長」


「よーす!北山」



「お!お前ら元気そうだな!」


俺を迎えたこいつらは部活の仲間。


俺が部長の、


”恋愛相談部”である。


その名の通り、恋愛相談を中心とした部活である。

すなわち、この部を通して俺は数多くの恋愛を”見て”いるのだ。

相談がこない場合は、だいたい駄弁り部みたいなもんだが、居心地は悪くない。

俺はいつものように椅子に座って読書を開始する。俺は相談がない場合、いつもこうして時間を潰している。


「先輩ほんとラノベ好きですよねー」


部活の後輩が興味無さそうに尋ねてくる。


「まぁ、好きだな。暇が潰せる」


「確かに暇は潰せますねー。でもスマホもあるじゃないですかー」


「スマホばっか見てると目が悪くなるからな」


「無駄に慎重ですよね先輩」


そう言ってスマホをいじり始める後輩。

みんなこの時間はそれぞれの時間を過ごす。

俺みたいにラノベを読む者。

スマホを弄る者。

勉強する者。

踊り出す者。


ん?踊り出す?


「お前なにしてんの?」


「あ、悪ぃな!ちょっとガチャで当たりが出て舞い上がっまちまった」


「ふふっ、そりゃ良かったな。急に踊り出したからビビったわ」


「すまんすまん!」


俺たちがそんな平和な時間を過ごしていると、



「す、すいませーん」


と、遠慮がちに来訪者がやってきた。

その来訪者に部員は驚きの様子。

俺はだいたい想像がついていたので特に驚かないが。

それもそうだ。

その来訪者にして

完全無欠の完璧ヒロイン、


「ちょっと相談してもいいかなっ?」


桜井三咲がそこにいた。

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