4 お風呂って…そう。やっぱり無理!!
「え、何言ってるの?」
ほんとに何言ってるの?
「いやお風呂一緒に入ろうって言ってるの」
「それは知ってるよ!」
「だって性別変わっちゃったから体を洗いづらいでしょ?」
いやそうだけど!!
「だって箕来の……その……裸を見る事になっちゃうし……」
「昔はよく一緒に入ってたじゃん。それに今は女の子になったばっかりだから女の子の事全然わかんないでしょ?」
確かにその通りなんだけど。女の子の事は全然わかんないけど。
……しょうがないけど今日だけは一緒に入るか……。
さすがに毎回二人だと女の子になったとは言え理性がもたない。
だって中身は今でも男なのだから。
「うん、確かにその通りだね。今はそうするよ。……今は」
そこ大事ね!
「やった!」
……やった?何か変なこと企んでない?まぁ今は気にしないでおこう。
「じゃ、お風呂入ろっか」
ニヤニヤしながら言われてもなぁ。
なんかアレだけど。
まぁ今は特に反抗する意味もないし素直に言うことを聞いておこう。
「うん」
と、僕は返事をした。
二人で洗面所に向かう。
到着してすぐに箕来が変なことを言い出した。
「じゃあ脱がしてあげる」
と。
「え?いやそれくらい出来るよ」
「良いから良いから」
何が良いのかな……。
「えっと、何も良くないよ……」
「脱がさせて下さい!お願いします!」
と、ついには土下座までし始めた。
今日の箕来、ちょっとテンションというか、言動がおかしいなぁ……。
「なんでそんなに僕のこと脱がさせたいの?もしかして同性愛者に……?」
でも僕の記憶だと同性愛者じゃあ無かった筈だし……。
……まさか僕の知らない所でなんかあったのかな……?
「違うよ!違うけど……なんでか今日はその……侑子ちゃんを見てると……なんていうか……その……興奮するっていうか……」
ヤバいじゃん、僕の妹。家族に興奮するって。
ここは一応注意しておこう。変な性癖が完全に定着する前に。
「箕来」
「な、何?」
「同性愛者なのは何も言わないけど、でも家族に興奮するのは」
そう言いかけた僕の言葉を遮って、箕来は僕に抱きついてきた。
「もう無理!我慢出来ない!」
と言いながら。
「ひゃっ!ちょ、ちょっと!」
そして、僕の匂いを嗅ぎ始めた。
「はぁはぁ……この匂い……。たまらない……!」
「ちょ、箕来!どうしたの!?は、離して!」
「こんな良い匂いで可愛い侑子ちゃんが悪いんだからねっ!」
「み、箕来~!」
どうすれば……。
この状況から抜け出せる気がしない……。
この体だと幼女だから力も弱いし……。しかも中身は男(?)だから女の子に対する耐性が無かったりもするし……。
そのせいじゃないかもしれないけど、まともな脱出策も思い浮かばない。
……こうなったら、箕来の弱点のくすぐりをやるしかない!
僕はそう考え、箕来の体に手を伸ばす。
変な所触らないように……。
ここかな?えいっ。
「ひゃっ!」
よし、上手くいった。
「な、何するの!妹のくせに……!」
あ、あれ?逆に怒らせちゃった?
「そんな悪い子にはお仕置きが必要です!こうしちゃうんだから!」
そう言って箕来は僕の服に手を掛けた。
「や、やめて!それだけは……!」
僕は必死に抵抗する。
「え〜?でもさっき一緒に入るって言ったよね?」
う。否定できない。さっきの僕を止めてやりたい。とは言ってもさっき言っちゃった訳だしなぁ……。
「わ、わかってるって。自分で脱ぐから……」
でも僕の理性持つかやっぱり不安だなぁ……。さっきのこともあったし。
そんなことを考えながら自分で服を脱いでいると、
「履いてるパンツ男物じゃん……」
そんなことを言われた。
女性モノの下着を持ってる訳ないじゃん!っていうか下着は流石に箕来のを借りる訳にはいかないからどうしよう。
「しょうがないか……明日辺りに買いに行くかな」
「もちろん私もだよね?」
まぁ今回はどんなのを買えば良いかわからないからしょうがないか。
「うん」
そうこうしている内に脱ぎ終わった。
……見れない。自分の体とはいえ、女の子の体を見るなんて……。
「……僕、目を閉じながらお風呂に入るから、髪は箕来にやってもらうよ」
「えー、髪だけかぁ」
あー、ますます僕の妹がヤバくなってきたね。そして、文句言うところはそこじゃない気がする……。
「あ、体は僕がやるからね」
「いっそ全身を私に委ねちゃっても良いのよ?」
「僕が良くない。……ただ髪の洗い方は教えて欲しいな」
「それは良いんだけどさ、目を瞑りながらじゃ教えにくいよ」
確かに。教えてもらう立場にしては勝手なことを言い過ぎたかな。少しは僕も頑張って慣れなきゃ。
「わかった」
僕はそう言ってお風呂に入る。
やっぱり……その……男の体の……時の……一番大事なところが無いと、変な感じがする。あると無いとじゃ大違い。
「ほら、目瞑らないで」
「うぅ…」
開けなきゃ駄目だよね。
僕は意を決して目を開ける。そして自分の体を見る。
少しだけふくらみがある。
でもこれが自分の体と思うと悲しくなってくる。
「私と違って小さいね」
そう言う箕来の体を見る。
……大きい。僕とは桁違いなほど。
「な、何?家族とはいえ無言で見つめられると照れるっていうか、恥ずかしいんだけど……」
そんな感情があるにもかかわらず、さっきは僕に抱きついてきたのか。まぁでもじーっと見るのもあれかな。
「ごめん……」
「気を取り直して、まずは髪ね。しっかりと、ゆっくりと、丁寧に。髪は女の命って言うくらい大事なんだから、絶対に傷付けちゃいけないからね」
へぇ。男の時はしっかりと、くらいしか守れてなかった気がする。
……それほどにも性別によって変わってくるんだなぁ…。
「わかった。しっかりと覚えておくよ」
「最初の方は私がやってあげるけど、少し経ったら自分でやるんだよ?」
「え……」
「一回やってもらっただけで覚えられる?」
う。それは無理だなぁ……。
「これは侑子ちゃんのためなんだよ?自分で髪も洗えない子に育ったら私、嫌だよ!」
まさかの親目線!
でも箕来の言う事も一理ある。
女の子になったからには、少しぐらいはまともに女の子として生活出来るようにしないとまずい。
「ありがとう、箕来」
「それじゃ、始めるね」
僕は良い妹を持ったなぁ……。
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