3 女の子って…そう。意外と大変!

なんとVtuberのオーディション、受かってしまった。

 活動名は黒沙他くろさた絡奈らくなで、地獄から悪魔が人間界に来てVtuberに興味を持って始めたという設定らしい。

 ……あ、設定とか言っちゃまずいか。ちなみに語尾に"あくー"って付けなきゃいけないらしい。……恥ずかしい。

 初配信は明日の午後18時からだった。余談だけど、二期生の二番手との事。……どうしよう……。結構緊張するな……。

 と、僕が一人で考えてると急に扉が開いた。

 「お兄ちゃーん?」

 入って来たのは箕来だった。

 「きゃっ!」

 と僕は驚いてしまった。

 「何でそんなに慌ててるの?まさかエッチな」

 「それだけは無い。絶対に無い。」

 と僕は急いで否定する。

 だって勝手に思い込まれたままっていうのはいやだからね。ってか驚き方が勝手に女の子っぽくなってきてる様な……。

 「そう。じゃあなんで急いで閉じたの?」

 そう来たか。どうする?僕。

 「えっと、それは……」

 「ほら答えられない」

 と余裕の表情で言ってくる。

 ……こうなったら正直に言うか。

 「驚かないで聞いてね。実は僕、Vtuberとしてデビューする事になったんだ」

 「へぇー!頑張ってね」

 あれ?反応それだけ?

 もっとこう「えー!!お兄ちゃん、あのVtuberになるの!?」みたいな驚きを期待してたんだけど。驚きが小さい事に驚いたよ。

 「う、うん。頑張るよ」

 「なんて名前?」

 「黒沙他 絡奈っていう名前で、明日の午後18時から初配信だよ。」

 「見に行く!」

 手を上げながらそう言ってくれた。あ、ちゃんと見に来てくれるんだ。

 「そう、ありがとう」

 僕は素直に感謝を伝えておく。

 「あ!そうそう。夜ご飯出来たよ」

 最初にそれを伝えるべきじゃ?って僕が怪しかったからだっけ。

 「わかった」

 僕はそう言って、自室を後にした。



 この姿になってから何度目かの夜ご飯だ。……だからなんだって話なんだけど。

 「今日はチャーハンにしてみたけどどうかな?」

 「美味しそう……!」

 箕来の料理に関して文句は無い。昔は良く食べていて食べ慣れているというのもあるかもしれないけど、それを差し引いてもおいしい。天才。

 「ありがとう。お兄ちゃn……じゃなくて……なんて呼べば良いんだろ?……妹だから……ゆきでいっか」

 「良くないよ!僕が兄なんだけど!」

 こんな姿でも、だ。そこだけは譲れない。

 兄としてのプライドがある。

 「え、じゃあ外に出た時にその見た目のお兄ちゃんに対して私が「お兄ちゃん」って言ってたらどう思う?」

 「それはおかしいけど!だからって家でそう呼ぶ必要はないんじゃ……」

 「わかった。じゃあ侑子ちゃんにしよっか」

 「話聞いてないし、それ悪化してない?」

 「良いの良いの。それよりほら冷めない内に食べて」

 あ、逃げた。いっつもこうやって別の話を始めて逃げる。まったく……。

 僕は呆れつつ箕来の料理に手をつける。

 ……やっぱりおいしいなぁ箕来の手料理は。

 「どう?おいしい?」

 「うん。おいしいよ」

 僕は笑顔でそう言う。

 「あー!その笑顔は反則だよ、侑子ちゃん!」

 結局その名前でいくんだ……。

 「はいはい」

 「そういえばさ、何で女の子になったの?」

 「それがわかってたら元に戻る努力してるよ」

 「確かに」

 その後は特に喋ることも無く、チャーハンを完食した。

 ……ギリギリ。どうやらこの体、胃が小さいらしい。まぁ、幼女だから仕方ないとは思うけど。

 「えっと箕来、これから僕の量は少なくしてくれると助かるんだけど……」

 「食べないと大きくなれないよ?」

 「この体、胃が小さいから食べきれないと思うんだ。それに食べきれないと箕来に申し訳ないっていうか……」

 「わかった」

 箕来はそう了承してくれた。

 「ありがと」

 「……ほんとにありがたいって思ってるなら一緒にお風呂、入ろ?」

 は???????どうしてそうなった??????

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