第41話 目覚めと奇襲
「……イ…大…夫か? ル……」
眩い光に包まれてどれくら経ったかも分からない。
真っ白な空間。
空中を泳ぐようにもがくと、やがてどこかから聞き覚えのある声が聞こえてくるようになる。
「おい、ルイ! どうしたんだ?!」
この声は……ネル?
「大丈夫、息はしておるよ。気を失っているだけみたいじゃな」
「そうか。けど、どうしていきなり……」
これは……ミノ爺の声。
私、戻ってきたのかな。
「ほおれ。何をぼさっとしておる! 早くせんか!」
「……早くって、何を?」
目を開いて、ここが元いた遺跡だったらそう確信できるんだけどな。
なんだか瞼が重くってまだ目を開けられない。
「決まっておろう! ちゅうに決まっておる! 姫様の眠りを覚ますには王子様のきっすが一番じゃ」
「んなっ!!」
耳だって。
聞こえてはいるけど、ぼんやりと声が入ってくるだけで内容まではわからないし。
「わしはこれまでそうやって目覚めたおなごを何人も見てきておる」
「……本当、か?」
「ああ! さ、はようせい!」
「……」
……うーん……。
何を言ってるかはわかんないけど、やかましかった声が急に止んだ。
……どうしたんだろ。
……あ。
目が開きそう。
「……え???」
私が目を開けると、超至近距離にネルの顔があった。
その顔は目を閉じており、ゆっくりと近づいてくる。
「えっ……あぁ……ちょ……」
近い近い近い!
けど、口がうまく回らない。
ネル! 一体なんのつもり?!!!
ああ! もうだめっ!
私とネルの唇が触れそうになった、その瞬間。
——バチバチバチ!!
台座に置いておったラウからこれまで見たことのないような電撃が轟音とともに発せられた!
「?! な、なんだっ?!」
ネルはその光と音に驚いて飛び上がる。
「……た、助かった」
ようやく口も開き、自分の体も起こす。
どうやら、私は台座の並んでいた部屋の床に倒れていたみたい。
ラウに目を取られていたネルが、私に気づいて起き上がった背中を腕で支えてくれた。
「ルイ! よかった、目が覚めたんだな」
「……うん」
「急に倒れたから心配したんだぞ! あんまりびっくりさせんなよな」
「……それはこっちのセリフ」
「え?」
「いや、なんでもない」
私はプイとそっぽを向く。
……こっちの方が驚いたよ!
まさか夢から目を覚ましたらネルの顔があんなに近くにあるなんて。
……って、そうだ!
あの夢!
出てきた女の子は、もしかして……。
私はラウと話すべく台座を見ると、その上でラウは怒り狂ったように発光していた。
「どうしたのラウ?! ちょっと落ち着いて!」と語りかけるとラウの光が収まったので、台座の上からラウを手元に戻す。
『ネル!! 貴様! 寝込みのルイを狙うとは!! ケダモノ! 破廉恥! すけこまし!!』
……どうやら、ラウはさっきのことに怒ってるみたい。
「おいおいおいおい! 勘違いするなよ! 俺はこの爺さんがそうすればルイの眠りを覚ますことができるって言うもんだから、それに従ってだな! なあ、爺さん?!」
「……わし、そんなこと言ったかの?」
「てんめ、じじい! とぼけるんじゃねえ!!」
『さあルイ、この痴漢に断罪を!』
「やめろ! ルイ! 落ち着け! 話せばわかる! なっ?!」
ラウはバチバチといつでも放電できるように帯電し、ネルは床に両膝をついて両手の平をこちらに見せてこうさんのポーズだ。
……なんだか、さっきの非日常的なことは嘘だったみたいにいつも通りの光景。
ラウもいつも通りだし。
さっきの話をしたいところだけど。
けどなあ。
急に違う話をしても、その説明に疲れそうだしなあ。
今は一発、このくだりを収めるとしよっかな。
……ふふ。
「
「まっ、待てルイ、待って…………グワアアア!!!!」
眩い電気とネルの叫び声が狭い部屋の中に広がった。
◇◇◇
「……んで、何があったんだよ?」
「何がって何が?」
「さっき急に倒れただろ? あれのことだよ」
ここは台座の並んでいた部屋の二つ隣の部屋。
ミノ爺が暮らしている部屋らしく、生活感が溢れている。
ミノ爺は用があるらしく席を外していて、私たちは椅子に腰掛けている。
さっきの電撃のせいか、ネルの髪の毛は少しボサボサしている。
「ああ、そうそう! そのことについて話したくって。……ラウ、もう落ち着いた?」
『ルイは優しすぎます。こんな破廉恥男、最大出力で黒焦げにすれば良いのです……』
「ラーウ?」
『……わかりました。いいですよ。ルイ、話してください』
二人の了承をもらい、「こほん」と一息ついて話を始める。
「私ね、夢を見てたの」
私は、二人に先ほど体験したことについて話した。
真っ白な世界。
眩い光。
山奥の男性と子供達。
そして金髪の少女。
隠し事なく全て。
私が話を終えると、まず口を開いたのはネルだった。
「ルイが倒れてたのはほんの数十秒だったんだが、そんなことがあったとはな」
突拍子がないことだって言われたらそれまでの内容だけど、ネルは信じてくれたみたい。
……まあ、信じてくれないとは微塵も思ってなかったけど。
私が頷くとネルは続ける。
「しかし、ルイが見たって言う映像が、もし昔に本当にあったことだとしたらさ。その金色の髪の女の子ってのは、もしかして——」
ネルがちらっと私を……いや、私が持っているラウを見るのと同時にラウが答えた。
『私です』
「……本当なの?」
『はい。私もルイと同じ映像を見ていたようです。懐かしい光景……色々と思い出しました』
「思い出した? 何を?」
『そうですね、例えば…………私が元は人間だった、とかでしょうか』
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