第40話 まばゆい光に包まれて

 私は一人、真っ白い世界に立っていた。


「ここは、どこ?」


 少し歩いてみるも景色は全く変わらない。

 それに地面から跳ね返される力が足の裏に伝わってこなくて、変な感じ。


「おーーーい! 誰かーーー!」


 大きな声を出すも反響することなく、すぐに静かになる。


「一体どこなのよ、ここ……」


 すると、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてくる。


『……父様』


「?! 今のって!」


 間違いない、ラウの声だ。


「ラウ? いるの? いるなら返事をしてー!」


 けれど、ラウからの返事はなく、その代わりうわごとのようなラウの声が頭に響く。


『兄様、私怖いです』


『大丈夫よ、姉さんがついてるから』


『それでは父様、おやすみなさい……』


「ラウ、一体何があったの……? ……っう?!」


 続いて、私の頭の中に映像が流れ込む。


「これは……?」


 山奥にひっそりと建つ木造のお家。

 その前で元気に遊ぶ八人の子供達。

 そしてそれを優しい笑顔で見守っている丸メガネの男性。


「……今のは誰?」


 その映像が消えたかと思ったら、違う映像が頭に入り込む。


 家の中で丸メガネの男性と口論をする紫髮の男。

 それをドアの隙間から見る金色の髪の女の子。


「もしかして、今のって……」


 映像は再び切り替わる。


「あ。またさっきの女の子」


 暗い真四角の部屋の中で石の机に横たわる金髪の少女と、その横に立つ丸メガネの男性。

 少女が寝る机の上には見たことのある槍が宙に浮いている。


「今の槍、私のよく知ってる槍じゃない……」


 その映像も途絶え、初めて見たことのある光景に変わる。


「ここは、さっき私たちがいたところ?」


 狭い部屋に八つの台座。間違いない、さっきの部屋だ。

 けれど、壁に装飾はなく、祭壇もピカピカに磨かれている。


 映像は続き、さっきの男性が入ってくる。

 さっきの少女は横におらず、男性は両手で大事そうに槍を持って入ってきた。


 丸メガネの男性は祭壇の上に丁寧に武器を並べていく。

 並べ終えた男性は泣きながら壁に花の彫刻をしたため始めた。


「まさか、ラウって……」


 私が結論にたどり着く前に、映像は途絶える。


 映像が頭から抜けてすぐに、真っ白の世界はさらに輝きを増していく!


「うっ! 眩しい!」


『父様……みんな……私頑張ってるよ……』


「ラウ! いるの?!」


『いつかまた、みんなで暮らせる。そう信じてる……』


 眩い光の中、涙を流しながら立っている金髪の少女が確かにそこにいた。


「ラウ? ラウなのね?!」


『ああ。目覚めたら、どんな世界が待ってるのかなあ。楽しみだなあ』


「ラウーーー!!!」


 眩しく自分の姿も見えないほどの光に包まれて、

 私は再び意識を失った。

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