第38話 エポール遺跡へ出発
二人のする話はやっぱりいつも難しいな……。
フェルルはついていけてるのか見てみると、椅子に座って本を読んでいた。
聞く相手がいないので、「あの、先生方……勝算ってなんでしょうか?」と当人達に確認する。
「ん? ああ、ルイはどこまでわかった?」
「えっと、私が捕まって幻術をかけられても、ラウは操られた私に力は貸さないってところまで」
『その話、”ルイを元勇者に”、”私を伝説の武器”に置き換えても成立するとどうなります?』
「えっと、捕まったリーカさんは
ようやく私にもピンときた!
「そう。操られてる元勇者の連中は伝説の武器の恩恵を受けられてない可能性が高い。それなら、フェルルを含めた俺たちにも勝機があるってわけだ」
「なるほど!」
「そう考えると他にも合点がいく。伝説の武器を持つ元勇者二人も従えてるのに、なぜもっと大々的に攻め込んでこないのか? その答えも同じかもしれないな」
「魔王は勇者のみんなをうまく扱えていない?」
「おそらくな」
そっか。
ラウだけじゃない、他の伝説の武器達も生きている。
「捕まってるのは勇者のみんなだけじゃない。その武器も苦しんでるんだ……」
『ルイ……』
「ああ、そうだな」
「早く助けてあげないと!」
私の決意に同調するようにネルは頷いてくれた。
『ただいま戻りました』
ドアを開けて部屋にテツとダイが入ってくる。
『メモにあった物品を買ってまいりました。ご確認をお願いします』
「ああ、ありがとう」
「ネル、今喋った方がテツよ? わかった?」
「わかるか!!」
私たちは荷物を整えて旅支度を終えた。
◇◇◇
「んー! 今日もいい天気! やっぱり魔法障壁の内側よりも外の方が太陽が気持ちいいね」
「そうか?」
「……そうだね」
『そうですよ』
ウィンベルンを出て私たちは……どこへ行くでもなく立ち止まっていた。
「……」
「……」
「ネル次の目的地は?」
「……まだ未定だ」
「ええっ!! こんなに意気揚々と出国したのに?!」
「お前が話を聞かずに先へ先へ行くからだろうが!」
「あれ、そうだっけ?」
「そうだ」
「……そうだった?」
『そんなことありません』
「ったく。やりづらいったりゃありゃしねえ……」
男1対女3の構図がすっかり出来上がり、ネルは押されっぱなし。
「どこかに俺の味方はいないもんかねえ」
ネルは目を細めて虚空を見つめている。
『そんなことより少年、次の目的地です。候補くらいないのですか?』
「まあ、ないこともないが……」
「え! どこどこ?!」
「エポールって遺跡だ。この近くにあるらしくて、大昔に伝説の武器が発見された場所だそうだ。もともと伝説の武器への対抗手段を調べたくて行こうかと思ったんだが、さっきの話のおかげで優先順位は下げようかと思ってな」
ラウが見つかった場所……か。
どんなところだろう。
遺跡なんて行ったことないし、ちょっと興味あるな。
「ラウは覚えてるの? エポール遺跡がどんなところか」
『……すみません。覚えていません』
「まあ、無理もないだろう。その遺跡から伝説の武器が見つかったのは今から千年ほど前の話らしいからな」
「へえ、千年も……」
『行ってみたい……』
「え? ラウ?」
『私、行きたいです! 私がどんなところで眠っていて、発見されたのか。知りたいです!』
「ラウ……」
初めてだった。
ラウが自分の意思でどこかに行きたいって言うのは。
『お願いですネル! そこへ連れて行ってください!!』
「私からもお願い! ネル!」
連れて行ってあげたかった。
いつもラウにはお世話になってるし、ラウには足が生えてないから自由に行きたいところに行けない。
私が連れて行ってあげたかった。
「いや、お願いも何も、行かないなんて言ってないだろ。俺はお前らが行くところへついてくだけだ。目的地はルイが決めればいい」
フェルルも”私が決めて”と手のひらを私に向けてくれた。
「ありがとう、みんな。それじゃあ行こう! 次の目的地はエポール遺跡!」
私たちは、ようやくウィンベルンを後にした。
◇◇◇
「まさか、強化魔法も使えるようになってるとはな」
「すごいでしょ! もうネルに乗せてもらわなくてもいいんだから!」
「……ネルに乗る? どう言うこと? まさか下ネタ?」
「なんでそうなるのよ!!! ネルってね、ワンちゃんになれるんだよ! 強化魔法が使えない間はよく乗せてもらって移動してたの」
「……犬に?」
「ほんとだよ! ワンちゃんのネルはカッコ可愛くていい感じなんだから」
「へえ、それはすごい」
エポール遺跡に向けて移動している私たちは、街道を走りながら雑談をしていた。
自分で説明しながら、そんなこともあったなーと懐かしむ。
するとすぐに遠くに古ぼけた建物が見えてきた。
「……あ! あれが遺跡?」
「ああ。思ったより早かったな」
遺跡に近付くにつれ、倒れた石柱や石材が増えてくる。
「うわ〜。近くで見ると結構大きいし、結構崩れちゃってるね」
「ああ、けど本丸は無事みたいだな」
確かに、一番大きな建物はひび一つ無くなぜか圧倒されるような神秘的なものを感じ、自然と厳粛な気持ちになる。
「……すごい」
「よし、早速入るぞ」
「うん……あれ? フェルル? 行くよ?」
私とネルが入り口に向かうも、フェルルは近くの石柱に持たれたまま動かなかった。
「……私はいい。ここで待ってる。二人で行ってきて」
「そう? じゃあ行ってくるね」
ひらひらとこちらに手を振るフェルルに手を振り返して、私とネルは遺跡の中へと入って行った。
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