第33話 一人での戦い
初めての敵に、誰からのアドバイスももらわない。
私一人で挑む。
さっきまでは爽やかに感じた風も、今や緊張を運ぶのみとなった。
対峙する相手は、体長三メートルほどのカマキリのモンスター。
「スゥーーー、フゥーーー」
細く長い息を吐き、「よし!」と自分に気合を入れる。
まずは手始めに……。
「
カマキリに向かって電撃を放つ!
ラウから一直線に飛び出す電撃だが、紙一重のところで避けられてしまう。
「うそ?!」
これまで外したことこそあれど、避けられたことなんてなかった。
まさか電撃よりも早く動けるなんて!
動揺する私に、カマキリからの反撃が襲う。
振り下ろす鎌を槍でなんとか受け止めるけど、相手の方がパワーが強い!
私はこらえきれずに後ろに吹っ飛ばされる。
「ぐううぅ!」
受け身を取ることができなかったため、地面を転がるように飛ばされた。
「いっつ……」
私が地面を転がり擦った距離は数メートルどころじゃないらしく、カマキリの姿がかなり遠くに見えた。
槍で受けてこれなら、ガードできてなかったらどこまで飛ばされてたんだろ……。
というか、真っ二つとかになるのかな。
向こうの攻撃は強くて、こっちの攻撃は避けられるんじゃどうしようもないんじゃ。
だって、相手は雷よりも早く動けるんだし……。
そこで、自分の考えに自分で疑問が湧く。
いやいやいや。
そもそも雷よりも早く動ける生き物なんているの?
まあ、百歩譲っているとしてそんな生き物がいてこのカマキリがそうだったとしても、じゃあなんで私はこいつの攻撃を受け止めることができたの?
私、雷スピードの攻撃なんて受け止められる自信ないよ?
と、いうことは……。
試しに槍の先をカマキリに向けてみると、カマキリは槍の直線上から体をどかすようにひょいと横に避けた。
やっぱり!
電撃を見てから避けたわけじゃなくて、切っ先を向けられたから攻撃を警戒して避けただけなんだ!
そうとわかれば話は簡単よ。
槍をわざと向けて、相手が避けた方向に——
私は槍の先端を再びカマキリに向けカマキリの回避を誘う。
けど、本命はこの次!
カマキリの移動先に狙いを定めて
「
今度は電撃がカマキリに命中した!
やっぱり、雷よりも早くは動けないよね!
「やった! ……あれ?」
けれど、様子がおかしい。
いつもみたいにビリビリが全身を覆わない。
そのまま電撃は命中したところにとどまり、やがて消えてしまった。
カマキリは「キキキキキ!」とピンピンしてる。
「嘘?!
「キキキ!」
こっちに向かってくる!
どうして?! 電撃はこいつの体にちゃんと当たったのに!
「キキー!」
また鎌を振り上げた! 攻撃してくる!
私は間一髪振り下ろされた鎌を横に避けた。
「あ、危なかった」
すると、先ほどの攻撃とは違う点を発見する。
……あれは何?
鎌の内側、ムササビとかみたい膜が張られてる。
もしかして、あれが何か関係あるんじゃ。
仮説を確かめるべくもう一度
電撃は命中するも、膜から身体中に広がることはなく、膜の中で消滅してしまった。
……やっぱり!
あの膜みたいなやつ、魔法が効かないんだ!
「キカキキキ!」
反撃しにくるカマキリの攻撃をなんとか避けながら考える。
じゃあじゃあ。
こいつを倒す方法は……。
1! 膜以外の部位に魔法を当てる!
2! 物理で倒す!
かな? どっちがいいんだろう?!
けど、今は教えてくれる人はいない。
自分で決めなきゃ!
「っ! やばっ!」
捌き切れなかった前足の薙ぎ払いをもろに脇腹にくらい、最初とは比べものにならないくらい吹っ飛ばされる。
「ううぅ……いったぁ」
けど、なんとか立ち上がれる。
これも
けど、痛い!
「キキキ!」
カマキリは追い討ちをかけにこっちに迫ってくる。
「……もう怒ったから」
別にカマキリに聞いて欲しいわけじゃないけど、そう宣言する。
「もう考えるのはやめた! どっちかわからないなら両方やればいいんでしょ!」
私は自分のポーチに手を突っ込み最初に手に当たったものをカマキリに向けて投げる。
「えい!」
——カン
それはあっさりカマキリの前足に弾かれて上空に跳ね飛んだ。
続いて槍をカマキリに向ける。
しかし、カマキリは避けようとしない。
自身の前に鎌の内側にはる膜を突き出しながら突っ込んでくる。
「確かに、
槍の先端を、さっき私が投げてカマキリに上空に弾かれたものに向ける。
「
電撃が私の投げた何かに命中し、そこから
「ギギギギ?!」
「やっぱり、膜じゃなければ魔法は効くのね。けど、これで終わりじゃないよ!」
私は進行を止めたカマキリに向かって飛び出す!
「さっきの森で身につけたステップを見よ!」
カマキリはまだ電撃が効いてて動かない!
——チャンスだ!
「やああ!」
カマキリの横をすれ違いながら、スピードを落とさず連続攻撃で全身を切りつける。
私が通り過ぎると同時に、カマキリの全身から体液が吹き出る。
「ギイイイイ! ギガガガ……」
カマキリは悲鳴のような鳴き声を出し、活動を停止した。
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