第8話 気になる質問
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部屋に入ると、蒼汰たちは予想通り騒ぎ出した。
「おい、お前どういうことだよ!」
「どういうことって、何がだよ」
蒼汰たちが言いたいことは痛いほどわかるが、自分でも、なぜ天音さんがこんなにも親切にしてくれるのかわからないため、説明のしようがない。
「めんどくさいな。天音さん外に待たせるのも悪いから、早く帰ってくれ」
「天音さんっていうのか。下の名前は!お前との関係は!!」
「個人情報。てか、そんな知りたいなら直接聞きに行けよ」
「あんな可愛い人と話せるわけないだろ!てか、早く教えろ」
聞かれたことに答えないとほんとに帰ってくれなそうな勢いだ。試合中でもこんな真剣なところを見たことがない。
「はあ、わかったよ。あの人は天音美零さんて言って、お前らが勘繰るような仲じゃないよ。俺と同じ事件の被害者ってだけ」
怪我が治ったら京都に行く約束をしている。と言ったら確実に面倒なことになる。余計なことは言わないようにしよう。
「それだけなわけないだろ。少ししか話してなかったけど、仲良さそうだったし」
「それはお前がそう感じただけだろ。実際まだ3日くらいの仲だし。ていうかほんとに帰ってくれない?天音さんに悪いから」
急に静かになり、帰る気になったのかと大翔は思ったが、そう簡単にこいつらが帰るわけがなかった。
「いったん落ち着け。よく考えたら、大翔でも少しは仲良くなれるんだ。てことは、俺らにも仲良くなるチャンスがあるってことだ!」
謎の団結力で、ドアに向かった蒼汰たちを全力でとめようとするが、やはり車いすでは止めることができない。
ドアを開けると、先程と同じ場所にいた天音さんは、突然ドアを開けられて、驚いていた。
「あの、待たせてるのも悪いんで、俺らのことは気にしないで中に入ってください」
「え、でも私が入ると話しづらくなっちゃいませんか」
「全然気にしないでください。こいつと話すことなんてもう何もないんで」
見事に目的を見失っている。こいつらやっぱり天音さんと話したいだけだ。
「えーと、大翔君。ほんとにいいの」
天音さんは知らない男5人組に急に押しかけられ、困っているところで、俺を見つけて、助けを求めてきた。
「天音さんがいいなら俺はいいんですけど...」
なんて言えばいいにかわからず、どもっていると、蒼汰はそのすきを見逃さなかった。
「こいつがお世話になってるみたいなんで、お礼をしたいなと思って。」
「えっと、じゃあそう言うことならお邪魔しようかな」
「ぜひ!」
いろいろとおかしいところなのだが、蒼汰たちも少し話せばすぐに帰るだろ。あいつらが満足するまでは黙って見てよう。
部屋に入ると、大翔はベットに上へ、天音さんは蒼汰たちに座ってくださいと言われ、椅子に座っていたが、蒼汰たちはなぜか窓際に綺麗に整列していた。
蒼汰たちがいる中で、俺も天音さんもどう話していいのかわからず、戸惑っていると、
「あの、天音さんって高校生ですか」
突然蒼汰が質問しだした。
「はい。高校2年です」
「どこの学校に通ってるんですか」
「えーと、川崎港です」
「川崎港かー。俺らの学校と近いですね。何回か試合やったことあります。あ、俺らは川崎東高校ってとこです」
川崎東高校と聞いて、天音さんは少し驚いたようだった。
そういえば俺も天音さんがどこの学校に行っているのかは知らなかった。というか、俺もまだ言ってなかったっけ?
「部活とかって入ってないんですか」
「1年生のころはテニス部だったんだけど、いろいろあってやめちゃったんですよね」
「そうなんですか。あ、俺たちは大翔と同じサッカー部です」
「仲がいいんですね。羨ましいです」
それからもどんどん質問していった蒼汰たちだったが、20分ほどしたところで、満足したのか帰る気になったようだ。
「そうだ、ずっと気になってたんですけど天音さんって彼氏いるんですか」
「彼氏ですか?私今まで1回も付き合ったことがないんです」
下を向いて、すこし恥ずかしそうに小声で言った天音さんはとてもかわいかった。蒼汰たちもそんな天音さんを見て、あほみたいに口を開いていた。
「え、ホントですか!でも天音さんみたいな美人さんがクラスにいたら絶対モテますよ。高嶺の花ってやつですね」
「全然そんな感じじゃないですよ。私、男の子の友達ほとんどいないんで」
天音さんの言葉を聞いて小さくガッツポーズをした。だがそれは自分だけではなく、この場にいた男全員だったようで、みんな同じような表情をしていた。
最後に1番気になっていたが、今まで聞くことができなかった質問をして、蒼汰たちはやっと帰って行った。
【あとがき】
前にあとがきで言っていた課題なんですが、何とか終わりそうなので、できるだけ1日1本投稿できるようにがんばります。1週間に5本以上投稿目指します。コメント、レビュー待ってます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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