第7話 最悪の展開
✤
病院からの帰り道、この後は特に用事はない。せっかくだから、買い物でもしていこうかな。
大翔君には用事があるといったが、あの時私は嘘をついた。
本当は、昨日忘れた雑誌をできるだけ早く返してもらうためだった。病室に入るために、わざわざ受付の人に適当な嘘までついて。
面会時間外に行ったのは、大翔君がふとした時に、あの雑誌を読んでしまうかもしれないので、その可能性をできるだけなくすためだった。
だけど、今になって考えてみると、だいぶ非常識なことをしたな。これからはこんなことがないように、気を付けよう。明日お見舞いに行くとき、ちょっといいお菓子を持って行こう。
それほどまでにあの雑誌を見られることが嫌だった。
出会ったきっかけは最悪だったけど、せっかく少し仲良くなれた大翔君に私の秘密がばれたら、この関係も終わってしまうかもしれない。それが怖かった。
もう二度とあんな思いはしたくない。その思いが心の中を支配する。
「はぁ。」
さすがにネガティブになりすぎかな。最後に質問した時も嘘はついてないみたいだったし、大丈夫だよね。
いろいろなことを考えすぎて少し疲れた。そろそろ家に帰ろう。
家に帰ってからシャワーを浴び、少し早めの夜ご飯を食べてから、日課のストレッチをして眠ることにした。
あ、そういえば今日大翔君とLINE交換したんだった。せっかくだしメールしてみよう。
そうしてメールをしようとすると、頭にある疑問が浮かんだ。
なんて送ればいいんだろう。
学校の友達でも、親戚でも、仕事先の人でもない。今まで関わってきた人たちとは少し違う。
今まで考えたことがなかったけど、基本メールをする時は、その人との関係や距離感を考えるもの。だけど、大翔君にとって、私はどんな立ち位置なのかがわからない。
打っては消し、打っては消しを繰り返しているうちに、1時間も経ってしまった。
最終的には自分が考えた中で1番無難なメールを打つことにした。
『今日はいっぱい話せて楽しかったよ(≧∇≦)明日は2時くらいに行こうと思ってるんだけど、大翔君は大丈夫?』
送っちゃた~。さすがにメール上でも内田さんはどうかと思って大翔君にしたけど、変じゃないかな?
送った後すぐに既読が付いたが、返信がなかなか来ない。
やっぱり大翔君って打ったのがっダメだったのかな。もしかして私に大翔君って言われたのが嫌だったのかな。でも京都に誘ったときは結構乗り気だったから、嫌われてはいないと思うんだけど...
そんなことを考えていると、大翔君から、返信が来た。
『俺もすっごい楽しかったです!特に予定はないので大丈夫ですよ。楽しみにしてます。』
「よかった~」
とりあえず嫌われてはいないみたいでよかった。なんか変なことに頭使いすぎて疲れてきたな。
大翔君から嫌われていないことが分かった後は、2度目の返信は時間をかけずにできた。
『了解です!私も今からすっごい楽しみだよ!』
✦
朝の7時。今日もいつも通りにアラームの音で起きる。
身支度をして、朝ご飯を食べる。今日は10時から2日に1回の検査の日だ。検査を終わらせて、自分の病室に戻ると、スマホに大量の通知が来ていた。
通知の大半がサッカー部の仲間からのものだった。内容は、試合が終わったから1時くらいにこちらに来るとのことだった。
返信しても、しなくてもどうせ来ることがわかってたので、それまでの間少しでも課題を進めることにした。
1時ちょっと前に奴らは来た。今日は蒼汰とそのほかに4人も来た。
『部活さぼるために病院行くって言ったんだと思ったら、本当に病院送りになってて心配したぞ。(笑)』という本当に心配してるのか、煽っているのかわからないことを言われた。こんな状態の俺を見てこいつらはよく笑ってられるな。怪我が治ったらやり返してやる。
そのあとも少し話をしていたら、お昼を食べてなくておなかがすいたと騒ぎだしたので、全員で病院内のレストランに行くことにした。
食べ終わったのが1時半過ぎ、天音さんがもうすぐ来てしまうかもしれない、病室に戻ったらすぐに帰らせよう。
自分の部屋までもうすぐというところで、部屋の前の壁に寄りかかっている人影が見えた。
一瞬でその人が天音さんであることがわかった。こいつらを音さんに合わせるわけにはいかない。ここから先に行かせるわけにはいかない。
だが、止めるよりも先に蒼汰たちが天音さんに気付いてしまった。
「あれ、お前の部屋だよな。誰かいるけど知り合いなの」
「あ、ああ俺の知り合いだからここでちょっと待っててくんない」
「は?待つわけねーだろ男だったらどうでもいいけど、女だったら話は別だよ」
ニヤニヤしながら小走りで走って行く蒼汰たちは、車いすでは到底追いつくことができなかった。
だが、天音さんがこちらに気が付いて顔を向けると、急に蒼汰たちの勢いが落ち、天音さんの目の前で立ち止まった。
謎の5人組に黙ってじっと見られている天音さんは、いったいどんな状況なのかわからずに、困惑していた。
「おい、お前ら早く部屋に入れ。天音さんすいません。こいつらすぐ帰るんで、少し待っててもらってもいいですか」
「は、はい。あの、なんかごめんね」
「いや、待たせてるのはこっちなんで、俺の方こそほんとにごめんなさい」
「そんなに急がなくてもいいからね。私全然待ってるから」
天音さんを外に残してとりあえず部屋に入る。
最悪だ。一番合わせたくない奴らを天音さんに合わせてしまった。
こいつらが俺の思い通りに動くはずがない。あー、これから絶対に面倒なことになる気がする。
【あとがき】
最近pvやフォロワー数が少しづつ増えてきて嬉しいです。
これは完全に僕の問題なんですが、この休み期間に出された宿題が多すぎて、小説を書いてる時間が減ってしまったので、2日に1話ずつ投稿しようと思います。
コメント、レビュー待ってます!最後まで読んでいただきありがとうございました。
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