エリート騎士だった俺は投獄され,天才を超える
冴えないkitoki
プロローグ
自分の視界を埋め尽くすほどの数の水の弾が、飛んできた。俺は紙一重ですべて避け、術者の懐に潜り込む。俺に技を放ったため、がら空きの胴に回し蹴りを入れる。クリーンヒットの感覚が分かった瞬間、相手がバランスを崩す。すかさず足を掛けながら、相手を後ろに押し倒す。相手が完全に倒れたのを見計らい馬乗りになっる。腕を拘束し、相手に全力の一発を入れる寸前で拳を止めた。
「勝負あり!勝者、瀬戸内 竜!」
男性の審判の声により観客席にいる生徒から、歓声が上がる。普通の模擬戦ならここまで盛り上がらないだろうが、俺たち二人はこの学園での実力、トップ1,2だからだろう。
「今日も俺の完敗だよ、竜」
今戦っていた相手、漣 湊が仰向けになりながらそう呟いた。俺、瀬戸内 竜は湊の体を引き上げる。
「完敗でもないだろ。実際、最後の攻撃は紙一重だったぞ」
湊がため息をつく。
「スキルの持ってる数じゃ圧勝なんだけどな~、マジでお前は凄いよ」
スキル、それは騎士としての特殊能力のようなものだ。ある特殊な環境下によって芽生えたり、自力で開発したりして身に付く。
しかし、騎士の中でもスキルを持っていない人たちは、少なくない。持っていなくても、並外れた身体能力のお陰で、銃弾が当たっても、かすり傷程度しかつかないからだ。
現在、俺の持っているスキルは二つ。対して、湊は10個以上。最後に放った技もスキルの一種だ。名前は「水操作、水変形」。
「まあ、また今度お手合わせ願うよ、竜」
湊が右手を差し伸べてきた。
「もちろんだろ」
俺たちは握手した。
「お疲れ!瀬戸内君!」
笑顔で声を掛けてきた女子生徒の名前は、橘 千夏。いわゆる、彼女ってやつだ。黒髪ロングヘアーで小動物のような可愛い目をしている。自分で言いたくないが、俺たち二人は騎士としての才能も有り、容姿も整っているのでお似合いのカップルなのだろう。
「ありがとな。じゃあ、一旦着替えてくるから」
笑顔で返すと、周りから好奇心と憎しみの目で見られた。こういうことで注目ってあんまりされたくないよな。
熱めのシャワーを浴びる。すると、右手の親指に痛みが走った。どうやら、先ほどの戦いで切っていたようだ。俺も、まだまだだな。
俺の生活は充実しているのだと思う。可愛い彼女に、今日は生憎来れないが、優秀な騎士の両親。そして俺自身の恵まれた才能。この生活がずっと保たれればいいよな・・・。シャワーを終え、部屋の外に出ると、校長が立っていた。
「竜君。待っていましたよ」
校長が薄気味悪い笑みを浮かべる。
「どうかしましたか?」
「実は、あなたに難易度最高の依頼があるんです」
騎士に何かを依頼するというのは、よくあることだ。学生なら多少の実力もあり、安い金額で頼めるから。しかし、難易度最高?少し不安を覚える。いくらこの学校のトップとはいえ、井の中の蛙だ。俺にできるとは思えない。
「内容は何ですか?」
「政治家の護衛だ」
政治家は、襲われることも多いから頼むこともあるだろう。
「普通はプロの騎士に頼むものでは?」
「もちろん貴方一人ではなくて、プロもいますが貴方の実力を見たいらしいですよ。貴方にとってもいい経験になるのでは?」
まあ、その通りだ。実践に勝る練習は無い。プロの騎士の技を盗むのもいいだろう。
「じゃあ、受けますよ」
不安と好奇心。好奇心が勝ってしまった。
俺は、この判断を一生後悔することになる。
エリート騎士だった俺は投獄され,天才を超える 冴えないkitoki @kai_tunndere
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