最終話 平凡な俺と完璧美少女

「た、たく……?!何言って……!?」


 私は慌てて問いただそうとするも、思考がオーバーヒートしてて上手く呂律が回らなく、俯いてしまう。

 周りからは物凄い暖かい視線が……うぅ!拓人のバカ!


「……お兄ちゃん、幸せにね」


「お、おう……改めて言われると照れるな琴音?」


 誰のせいでこうなったのよ!




 ☆




 皆と祝った後、美咲達は帰宅して私と拓人は思い出の公園に二人でやってきた。道中ずっと手を握りながら。


「……拓人、あれ本気で言ってるの?」


「じゃなかったら言う訳ないだろ……」


「普通は言わないと思うんだけど……?」


 私は睨むように視線を送る。


「うっ……ごめん」


 拓人はしゅんとなって、かなり落ち込んでいた。

 ……ちょっと言いすぎたかな?


「別に嫌だったから怒ってるんじゃない、凄く嬉しかったし私もいずれはそういった関係になりたいって思った、それに……」


「それに?」


「思い出したの……昔同じようなこと言ってたのを」


 最初はずっと一緒だと思ってた、でも小学生になってから離れ離れになってずっと落ち込んでた。

 もう逢えないんだって、何度も忘れようとしたけど結局忘れられなかった。


「確か……琴音と離れ離れになる一週間程前だっけ?」


「憶えてくれてるの……?」


「うん、その矢先に急に居なくなっちゃうから余計鮮明に」


 拓人も私と同じで寂しかったらしく、それが少し嬉しくて思わず体を拓人へと預ける。

 こうしていると少しずつだけど昔の記憶が戻ってくる、あの時の記憶が。


「……琴音、改めて言わせて」


「うん……」


「俺……琴音の事が好きだ、琴音なしじゃ何も出来ないぐらいに……琴音と一緒ならなんだって出来そうな感じ」


 大袈裟よ……でも、私も拓人と一緒なら何処へでも行きたい。


「今はまだお互い学生の身分だけどさ、俺と……結婚してくれますか?」


「うん……!」


 私達はそのまま抱き合って、お互い見つめ合い、もう何度目かになる口付けを交わしていた。





 ◇





 あれから数年の過ぎたある日、私達は結婚をして私達の間には二人の子供が出来ていた。


「パパー起きてー!」


「……もう少しだけ寝させてくれ」


「ママー!パパが起きなーい!」


 拓人を起こそうとしているのは、女の子で五歳になっていて名前は結希。

 元気はつらつで我が家の太陽と言える子、いつも笑顔。


「結希?あまり困らせたらダメよ?パパだってお仕事で疲れてるんだから」


「むー!」


 そう言いながらも私の傍に近寄ってくれる辺り、私に似ているのかな?


「……おねーちゃん、苦しい」


 結希は一つ下の弟の達也に抱き着いている。

 達也は顔立ちは拓人似で、いつも私にくっついてくる。


「達也!向こうで遊んでよ?」


「はいはい、いこ」


 なんだかんだ言って二人は仲が良く、余程の事がない限りは喧嘩はしない。

 二人の事を遠くで眺めていると、いきなり後ろから抱き締められる。


「もう……起きてたの?」


「違う、結希に揺り起こされたの」


 結衣と有原くんは大学生で同棲をして、二人仲良くしているらしい。

 美咲達は、私達と同じ日に結婚して子供と共に隣で三人暮らしだ。


「にゃーお」


 五月雨ちゃんもすっかり大きくなっていて、私達家族を暖かく見守っている。


「琴音俺と出逢ってくれてありがと、愛してる」


「私も……愛してる」


 あの時と同じように、でもあの時以上に熱い口付けを交わしていた。


                       完

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平凡な俺と完璧美少女 翔也 @syoya_416

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