第79話 サプライズ

《琴音視点》


 私以外の女の子に視線を送っていたことに少しムカついて、頬を膨らませながら意識をこちらに向けさせる。

 拓人はただでさえ、格好良くてモテるんだから辞めてよね!


「ほら行くわよ」


 ほぼほぼ無理矢理連れてきたは良いけど、プリクラなんて撮ったことない。何をすれば良いのか全く分からない。


「ひゃっ……!ちょっ拓人?!ち、近い……」


 あう……すぐそこに拓人の顔が……。

 

 気付けばカウントダウンが始まってて、慌ててカメラに顔を向け精一杯の笑顔で拓人に抱き付いた。

 心臓がバクバクしてて、今何が起こってるのか分からない。今はただ離れたくないという気持ちだけ。


「琴音……?」


「恥ずかしいから見ないで……」


 とはいえもう二枚目のカウントダウンが始まってて、らしくない私のまま撮られると思ったら拓人に抱き締められ驚いたところでシャッターが切られる。


「た、たく……と?」


「分かってる、次来るよ」


 拓人は優しく微笑んで、カメラに視線を移していた。


 ドクン……ドクン……。


 今までに感じたことがないぐらい拓人に対して、ドキドキしていた。顔も何時もよりも熱い。左を向けば拓人の顔。


 私は何を思ったのか


「えっ―――?」


 最後のシャッターが切られる瞬間に頬にキスをしてしまった。拓人はそのまま頬を触れる。


「…………あ、あんなこと……するから」


「!?……お、おう」


 もう頭の中が真っ白になって、当初の予定を忘れてしまいそうになった。まさかキ、キスをしちゃうなんて……!

 あまりにも恥ずかしすぎて拓人の胸に顔を埋める。


「お、おい……プリクラどうするんだよ?」


「好きにやって……今はちょっと無理ぃ……」


 狭い空間で二人きりだからって、あんな大胆な行動取るだなんて私どうかしてる!ああもう恥ずかしくて死ぬ!




 ☆




「落ち着いた?」


「うん……」


 まだ顔は見れないけど、私にプリクラを渡してくれた。


「はああああ……私なんであんなことを……」


「まあいいじゃん、俺はそういう琴音のこと好きだからちょっと嬉しかった」


「からかうなバカ……」


 でも好きって言ってくれた……えへへ、嬉しい。


「……ねえ拓人、そろそろ帰ろ?」


「今から帰るって……どこに?」


「拓人の家に、えへへ」


 もうそろそろ帰らないと心配しちゃうもん。


「ほら行こ?明るいうちに」




 ☆




 行きと同じように腕を絡めながら、上機嫌のまま拓人の家に向かっている私達。

 チラッと拓人の顔を見ようとしたら、偶然目が合う。


「何?」


「…いや、何でもない」


 そう言った拓人は何事もなかったかのように、そっぽ向かれる。若干顔が赤かったように見えたのは気のせいじゃないはず。


 そして私達は家に着き、そのままリビングへ向かう。


 パパンッ――


「「「誕生日おめでとう!拓人!(お兄ちゃん!)」」」


「えっ…………?」


「今日誕生日でしょ?折角だし、祝ってあげたいなって」


 言い切った後に拓人の顔を見ると、頬に一筋の光が見えた。


「あ、あれ……?なんで前が見えねえんだろ……」


「お兄ちゃん、今までこうやって祝ってもらったこと無いから嬉しくて泣いてるんでしょ?」


「うるさいっ……!そんなのじゃねえ……!」


 でも心なしか、結衣ちゃんも嬉しそうだった。


「通りで琴音があんなに甘えてくると思った……」


「あの琴音が?」


「余計なこと言わなくて良い!美咲も食い付くな!」


 涙を吹き終わった拓人の顔には、満面の笑み。


「皆ありがとう、俺なんかのために」


「水臭いこと言うなって、俺とお前の仲だろ?」


「ありがと裕貴……お前らとも出会えて良かった」


 不意に肩を抱かれて拓人に引き寄せられる。


「俺……琴音と、この先ずっと一緒に居たいって思ってるんだ……どんな状況でも、琴音とならなんだってやれる気がして……大切な存在なんだなって改めて思った」


「ちょっ……拓人……?!」


 い、いきなり何言い出すの……!?


「今こんなこと言うのは正直俺もどうかと思うけど、やっぱり皆に言いたい……」


 拓人は満面の笑みで、でもちょっと肩を抱いている手が震えていて、目はなにか決心したような感じで


「将来的に結婚しようと思ってる」


 皆の前で爆弾発言。


 私はたまらず


「は、はああああああああああああああああっ?!」


 と叫んでいて、誰よりも驚いていた。

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