第74話
拓人が朝食を取った後、私達は拓人の部屋に移って拓人は机で調べものをしているらしく、私は五月雨ちゃんとじゃれながら遊んでいた。
「拓人、何調べてるの?」
「うわわ、見るなって!」
「……何で隠すの?」
怪しい、なーんか最近変なんだよね。
「今はちょっと……ただ浮気とかそういうのはないから」
「まあいいわ、いずれ分かるんでしょ?」
「近いうちにね」
私は再び、五月雨ちゃんとじゃれ合い始めた。
それに最近寂しい、構ってくれないからこうして一人で過ごしている。一緒に居るんだから少しぐらい相手してよね。
五月雨ちゃんは私の寂しさに気付いたのか、体を擦り付けて甘えてくる。この子もご主人が構ってくれなくて寂しいみたい。
「……はぁ」
「どうした?溜め息なんかついて」
「なんでもない、暇なだけ」
五月雨ちゃんを抱えながら、ポケットからスマホを取り出して美咲に暇とメッセージを送った。
『いや、暇って言われてもね……』
『拓人が構ってくれない、寂しい』
『乙女か!』
まるで私が乙女じゃないみたいな言い方をされて、ちょっとムカついた。
『あんたよりはマシよ、バカップル』
『だからそんなんじゃないってば!!』
『いや端から見れば十分バカップルなんだけど……クラスメイト皆言ってるし』
美咲とやり取りしていたら、気付けば五月雨ちゃんは丸くなって眠ってしまった。本当に暇になってしまった。
『琴音のバーカ!今度遊びに行く時、絶対に憶えてなさいよ!』
「美咲と、か……最近お互いこれだもんね」
私は拓人と一緒に過ごすことが多く、美咲も同様に裕貴くんと過ごしていることが多いから、前みたいに遊びにいくこと事態減ってしまった。
久し振りに息抜きってのも悪くないかもと考えてたその時に、いきなり後ろから抱き着かれた。
「なーにしてんの?」
「……あなたこそ何してるのよ……い、いきなり抱き着いて」
「んー、可愛いから?」
それ答えになってない!ていうか面と向かって可愛いって言うなバカ……。あーもう!不意付かれたせいで顔が熱い!
「ご機嫌取りのつもり?」
「の割には随分とだらしない顔してらっしゃいますけどもその辺はどうお考えで?」
「……うっさい」
私は顔を逸らすと、無理矢理引き戻される。
「あっ……んっ」
私はびっくりして固まっていたけど、次第に流されるように身を任せていた。久し振りの拓人からのキス。
二度三度と長いキスをした後、お互い顔を離してそのまま見つめ合う。
「琴音、話したいことがある」
「……さっきの事?」
「うん……来週さ、夏祭りあるじゃん?俺、琴音と一緒に行ってみたい」
さっきの件と今の話の内容とどう関係があるのかは、拓人にしか分からない。
でも拓人と一緒に夏祭りにいけるなんて、嬉しいな。
「それで……さ、ここの夏祭りって噂があるんだ」
噂?何だろう?
「夏祭りに行ったカップルは、花火の際に二人きりになれば、生涯ずっと添い遂げるらしいんだ……だから」
だからさっき顔を赤くしながら見るなって……もう拓人ってば。
「……行く、拓人となら何処へだって」
私は拓人と一緒に過ごせるのなら他に何も要らない。
なら、私はあか姉に浴衣着せて貰おうかな……?
「多分今日結衣も誘ってると思うから、兄妹でダブルデートってのも悪くないんじゃない?」
「美咲達は……まあ言わずもがな来るか、こういうの好きそうだし」
「トリプルデート?なんか賑やかになりそうだね」
三組のカップル、それぞれの夏、それぞれに秘めた想いを胸に馳せて、今年の夏祭りデートが始まる。
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