第73話

《拓人視点》


 学校が終わり、夏休みに入って結衣がデートに行って数日が過ぎた日。

 俺はいつも通りに朝ぐっすりと寝ていたら、突然叩き起こされる。


「おはよう拓人、今日何の日か知ってる?」


「知らねえよ……まだ眠いから寝て良い?」


「はぁ……朝御飯冷めるからさっさと起きろ!」


 再び叩き起こされる俺、休みの日ぐらいゆっくりしたいんだけど……

 流石に二度叩き起こされたせいで、完全に目が覚めてしまい渋々リビングに向かった。


「おはよお兄ちゃん」


「はよ……ふあぁ~……眠い」


「拓人また夜更かししたんでしょ?」


 夜更かしっつーか、一応ちゃんと早めに寝てるんだけどな。

 期末に向けて一人で勉強してたとは口が裂けても言わない。


「結衣ちゃんはまたデート?」


「うん、って言っても誠司くんお昼に部活あるらしいから」


 結衣は時折こうしてデートにいく日もあるらしい。


「結衣ちゃんや美咲はこうして毎日デートしてるのに、なんで拓人はずっと家に居るのかしらね?」


「ならまた別れるか?」


「そういうことじゃない!ていうかそれは嫌!」


 ワガママだなぁ……いいじゃん、何もなくてもこうして一緒に居れるんだからさ。

 あとあのバカップル二人と一緒にしないでくれ。


「で……結衣、何やってんだ?」


「お気になさらず、どうぞイチャイチャしてて良いよ」


「だからって撮る必要ねえだろ……」


 結衣までバカップルみたいなことし始めたんだけど……お兄ちゃん悲しい。あー急に睡魔が。


「あ、もうすぐ時間だから行ってくるね」


「結衣ちゃん、いってらっしゃーい」


 結衣が出たのと同時に、俺は隣に座ってる琴音の肩に頭を乗せて三度寝を図る。


「こら寝るな、折角の朝ご飯が冷めるでしょ?」


「いやマジで眠いんだって……ふあぁ~あ」


「はぁ……少しだけよ?」


 その言葉を聞いて俺はすぐに意識を失った。




 ☆




《琴音視点》


「全く拓人は……でもいっか」


 本当気持ち良さそうに寝ちゃって、可愛いんだから。


「今日は二人だけだし……ふふっ」


 今日まで色々なことがあった、喧嘩別れや勉強会。楽しいこともあれば、嫌なこともあった。

 それでも私は拓人が好き、愛してる。全てが愛おしい。


 拓人は何になりたいんだろう?最近隠れて勉強を頑張ってるのは知ってる。力になってあげたいけど、あまり干渉しすぎると前みたいになりそうで怖い。


「んーっ、悪いな琴音」


「ううん、もう冷めちゃってるけどご飯食べる?」


「折角作ってくれたんだし、食べるよ、いただきます」


 私は隣で拓人を見つめながら、美味しそうに食べてくれるのが嬉しくて、ついつい頬が緩んじゃう。


「美味しい?」


「そりゃ琴音が作ったんだから美味しいよ?ずっと食べたいぐらいに」


「何よそれ、プロポーズのつもり?」


 私としては冗談で言ったつもり、まだお互い高校生でそんなこと考えたことはない。

 でも拓人はどうなんだろう?わ、私とけ、結婚……したいのかな?


「バカか、だろ?俺達」


「分かってるわよ、冗談よ冗談」


「御馳走様でした、悪いな毎朝作って貰って何もお返しできないだなんて」


 見返りなんて求めちゃいない、私はただしたいからやってるだけ……なんて言えるはずもなく。

 顔を少しだけ赤くして


「美味しいって言ってくれるだけで、十分よ」


 素直になることにした。

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