第71話 結衣の恋(中編)
数日後、私は朝早くから待ち合わせの場所に向かう為に準備をしていたら、お兄ちゃんとこと姉にばったり鉢合わせしてしまいました。
「あれ?結衣ちゃん今日はお出掛け?」
「は、はい」
事情を知ってるお兄ちゃんは、ものすっごく鬱陶しい顔をしてました。
「どこに行くか知らないけど、流石にその髪型じゃ駄目よ?私がちゃんとしてあげるわ」
私はこと姉に引っ張られて、リビングに戻されました。
「あの……これで大丈夫だから気にしなくても」
「ダーメ、女の子は可愛くないと」
そういやこと姉、いつもより可愛い格好してる。少しだけ化粧もしてて綺麗だなぁ…。
「拓人から聞いたけど、デートに誘われたんだって?」
「お、お兄ちゃん……!」
な、なんで言うかなぁ……もう。
「はい、終わったわ」
こと姉は満面の笑みを浮かべながら、可愛いと褒めてくれた。お兄ちゃんもいつもと雰囲気が違うって言ってくれた。
私は二人にお礼を言って、そのまま待ち合わせの場所に向かいました。有原くんにも褒めて欲しいなぁ……なんて。
☆
予定時刻よりちょっと遅れてしまった私ですが、肝心の有原くんが見当たりません。まだ来てないのかな……?
「芝崎……さん?」
背後から誰かの声が聞こえて、振り向いてみたらそこには普段と雰囲気が違う有原くんが居ました。
トクンと胸が高鳴り、私は恥ずかしくて、いつもより格好良く見えて、咄嗟に俯いてしまいました。
「ごめん、なさい……遅れ、ちゃって……」
「そんなことないよ!俺今来たとこだからさ……」
「「……」」
無言になる私達二人、すると有原くんが手を握ってきてました。私は驚いて彼に視線を送ると、微笑みながらこう言いました。
「芝崎さんその姿可愛いね……じゃ、行こっか」
「…………は、はい」
いつもと違ってなんだか調子狂う、同じ歳なのに敬語しか出ない……。
私は俯いたまま、彼にされるがまま駅に向かいました。
☆
数時間後、駅を降りて近くの遊園地に誘われました。
「わぁ……ここ前から行ってみたかったんだ……!」
私は前から行きたかった遊園地に連れられて、思わず気持ちが舞い上がっていました。
彼が私に見惚れているとも知らず。
「……そ、そか……誘った甲斐があった……かな」
「あっ……ご、ごめん……それじゃあいこっ?」
入場券を買って、遊園地に入って色々なアトラクションを回りました。
小さい頃は家族で別の遊園地に行ってましたが、今はそれ以上に楽しくて、笑顔で居ることが多くなりました。
そんな事を考えてると、もうお昼の時間。
「何か買ってくるよ、食べたいものある?」
「うーん、サンドイッチとか軽めのもので」
「分かった、ここで待っててすぐ戻るから」
そう言った有原くんは売店に向かっていきました。私は近くのベンチで待つことに。
その時、三人組の男の人達に話し掛けられました。
「ねえねえ今一人?俺らとどっか行かね?」
「そうそう、一緒に遊ぼうよ?」
「あ、あの……辞めてください……」
知らない人達にいきなり話し掛けられて、囲まれてしまった私は必死に抵抗をしました。
「ほら行こうよ?」
肩を掴まれた私は、恐怖のあまり声が出なくて体の震えが止まりませんでした。
こ、怖いよ……有原くん……!助けて……!
無理矢理連れていかれそうになった時、有原くんが戻ってきました。
「……その子、俺の彼女なんすけど?その手離してくれません?」
「なんだてめえは」
「その手離せつってんだよ、わかんねえのか?」
「調子乗ってんじゃねえぞガキがァ!」
一人の男の人が有原くんに殴り掛かってきましたが、片手で受け止めてそのまま後ろに腕を回してました。
「あででっ!!」
「まだやるつもり?」
「ちっ、いくぞお前ら」
三人組の男の人達は去って、私は彼に抱き着いてました。
「こ、怖かったよ……!有原くん……!」
「ごめんね一人にさせて、一緒に行けば良かった」
頭を撫でられた私は少しずつ落ち着いていき、体の震えが収まり、照れ笑いをしてました。
凄く格好良かったなぁ……有原くん。
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