第67話
俺は琴音をベッドに預け、布団を掛けると同時に昨日の事で俺は俯いてしまった。
「昨日って……俺のせい……だよな」
「……」
琴音は何も言わない、俯いてるから今どんな表情で、気持ちで俺を見てるのか分からない。
ただただ俺は、昨日こうなってしまったことに後悔するだけだった。
「……ごめん、俺が悪いんだよな」
「そんなことない……」
「えっ…?」
俺は顔をあげると、今にも泣きそうな顔をして俺を見つめている琴音がいた。
「そりゃ教室戻った時あんなの見ちゃったら……少しは怒ったけど」
やっぱり見られてた、あの瞬間を……。
「……本当はあんなこと言うつもりじゃなかった」
「……」
「でもいつの間にかとんでもないことを口に出して……」
琴音は弱々しくシャツの袖を掴んで、泣いていた。
「別れ……たく……ないよ……!」
これが琴音の本心だろう、俺だって別れたくない。
でも俺はそれ以上に琴音にしてしまった罪悪感で押し潰されていた。
「やり直したい……だから拓人――」
「やっぱり俺達ちゃんと別れよう……」
「えっ……?嘘、だよね…?嫌……嫌だよ!」
俺は琴音に身体を大きく揺さぶられる、でも俺は彼女と一切目を合わせなかった。合わせられなかった。
ただ一言ごめんとだけ言って、立ち去ろうとした。
「さっきから黙って聞いてれば……あんたそれでも男なの!?」
「お姉ちゃん……!」
俺は胸ぐらを掴まれ、今にも殴られそうな雰囲気だった。
「あの子はあんたともう一度やり直したいって言ってるのよ?!」
「俺だってやり直したいですよ……!でも……俺じゃ琴音を幸せに出来ないんです……」
俺は初めて人前で涙を流した、それだけ後悔―――
パシッ――
「ふざけないで!何が原因かはこの際どうだって良いけど、あの子にはあんたしか居ないのよ!」
「俺、しか……」
「今のあんたにも琴音しか居ないのよ!」
!?紅音……さん。
「だから……そんな寂しいこと言わないであげて」
俺は紅音さんに優しく抱き締められて、俺達のために涙を流してくれた。
ここまで言われて俺はまだ別れるのか?――違う。
こんなに俺のために叱った紅音さんの想いまでも踏みにじるのか?――違う!
「……俺がバカでした、彼女の事も信じられないなんて」
「じゃ、じゃあ…!」
「うん……やっぱり俺には琴音が必要なんだ」
そう告げた後琴音は泣いていたけど嬉しそうだった。
紅音さんのおかげで、俺はなんとか琴音とよりを戻すことが出来た。
「っていうか拓人君学校どうするのよ?琴音は風邪だから仕方ないけど」
「今から行っても怒られるだけなんで、サボります」
「サボ……ってはぁ、まあいいか」
琴音が風邪引いたのは半分俺のせいだ、それに……。
「えへへ……ごほっ…ごほっ…にへへ」
風邪で弱ってるせいなのか、よりを戻せたせいなのか分からないけど物凄く可愛い。
気持ち悪いぐらい満面の笑みを浮かべてる。
「私これから講義だから後はよろしくね」
紅音さんはそう告げたあとそのまま大学へ向かって、俺達だけになった。
「おわっ…!おい琴音!病人なんだから大人しくしてろって!」
「ぎゅーっ……すぅ……すぅ……」
無理をしたせいなのか、体熱くなっていて苦しそうに寝ていた。
「全く言わんこっちゃない……ったく」
俺は琴音をベッドに戻し、冷えたタオルをおでこの上に乗せた。その後リビングへ行き、よくあるシートを探して紅音さんが作ったであろうお粥と一緒に琴音の部屋に戻った。
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