第65話
どうやってここまで来たのか、全く覚えてない。
憶えているのは、全く気付かないうちに本音と建前が入れ替わってしまい、関係に大きなヒビを入れたこと。
そう考えるとまた私は泣きそうになった。
声に出せない程悔しくて、寂しくて、認めたくなくないという気持ち。
私が一方的に振ってしまったという事実だけ。
「琴音!何してるの?!風邪引くよ!」
私はその言葉を最後に意識がなくなった。
あぁ……馬鹿なことしちゃったな……
☆
「んっ……あれ?ここは…?ごほっ……ごほっ……」
寒い……身体の震えが止まらない……。
「全く……何があったか知らないけど、傘ぐらい差しなさいよ」
おねえ……ちゃん……?
「ぐずっ……お姉ちゃん!私!私…!」
「い、いきなりどうしたの……?」
「拓人と……別れちゃった……!」
私がそう告げながら抱き着くと、あか姉は驚いていた。
「あんた……本当に別れたの?」
私は頷くと今以上に涙が溢れてきた。あか姉は何も言ってこない。その代わり優しく抱き締めてくれた。
「……今は身体を治すことだけ考えなさい、後でいくらでも聞いてあげるから」
☆
《拓人視点》
ここまでどうやってきたのか分からないけど、何があったのかはしっかりと憶えている。
俺は琴音に振られた、それだけは憶えていた。
「はぁ……琴音」
俺のせいだ、俺は知らない間に彼女を不安にさせてしまった。最低な彼氏だ。
「……ただいま」
「おかえ……どうしたの?お兄ちゃん、なんか変だよ?」
「……そう、だよな……変だよな」
俺はそう言い残して自分の部屋に引きこもった。あの時のように。
「え……?ちょ、ちょっとお兄ちゃん?!」
☆
《結衣視点》
お兄ちゃんが帰ってきたと思えば、あの時みたいに暗い顔をして帰ってきました。
学校で何かあったのでしょうか?
私はまず琴音さんに連絡を取ることにしました。
「あ、もしもし?琴音さんですか?結衣です」
『もしもし、あなたがあの拓人君の妹さん?』
えっ…?誰でしょうか…?もしかして前に言ってた?
『ごめんなさい、自己紹介がまだだったね、私は上野紅音、一応琴音の姉になるかな』
こと姉のお姉さん……ですか、でも今はそんなことより。
『琴音の事だよね?風邪で寝込んじゃってるからそっちが分かってる情報だけでも共有しない?こっちもまだ分からなくて』
「えっと……どういうことでしょうか?」
ますます分からない、琴音さんとお兄ちゃんの間に何があったの?
『まず冷静にこれから話すことを聞いてね』
「はい」
一体何でしょう…?
『琴音が言うには、拓人君と別れたって言ってた』
えっ……あの二人が別れた……?
「ま、待ってください!どうしてあの二人が!」
『私だって分からないわよ……あんなに仲良かったのに』
紅音さんは少し悲しそうな声で、琴音さんのことを、お兄ちゃんの事を心配していました。
『そっちはどう…?拓人君の様子は』
「酷く落ち込んでました、まるで誰も信じられなくなったようなそんな感じです」
『そう……こりゃお互い重傷か』
「明日学校で友人の皆さんに話してみようかと思います」
『なるべく穏便にね?焦ってかえって修復不可能な状況にしないように』
「はい、分かり次第連絡します」
そのまま通話は終了、とにかく私はお兄ちゃんと琴音さんを元の状態に戻すことを最優先事項にして学校の準備をしました。
「お兄ちゃん……琴音さん……私頑張るから」
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