第57話
その後も時々イチャイチャしながら子猫と遊んでいてふと思うことがあった。名前付けてるのかな?まだ付けてないのかな?
考えれば考える程ますます、気になったので思い切って聞いてみた。
「ねえ拓人、この子の名前って付いてるの?」
「名前?そういやまだ決めてなかったな」
この子の名前はまだ決まってなかったらしい、性別とかって分かってるのかな?
ご主人である拓人にかなり懐いていて、もしかして雌なのかな?
「その子なら雌だって、今日母さんが動物病院行ってきたみたいだから」
……どうせなら当たって欲しくなかった。
むう、というか猫相手にむきになってどうするんだ私!
「一日中考えてたけど、俺名前決めるの苦手なんだよ…」
「……話し掛けても無視されたのってそれなの?」
「だから悪かったってば!……最終的に琴音なら良い名前付けてくれるかなって思って」
この子は珍しく真っ黒だから、ありきたりなのでは少し愛嬌がないわね…それに大人しめだから派手なのは可哀想だし…うーん難しく考えすぎかしら?
「やっほー、たっくん……お邪魔だったかな?」
明莉ちゃんが何故か拓人の家にやってきた。あれ、私何も聞いてないんだけど?
睨むように拓人に視線を送ると、逃げるように視線を逸らされた。怪しい。
「あー、たっくんに会いに来た訳じゃなくて猫ちゃんに会いに来たの」
「この子に?」
「うん、昨日の帰りにたまたまたっくんと出会っちゃって…えへへ」
再び視線を逸らされた、後で覚えてなさいよ……
子猫は私から明莉ちゃんへと歩み寄っていった、思った以上に人懐っこい。まるで結衣ちゃんみたいに。
「可愛いねこの子、人に慣れてるのかな?」
「……なんか結衣みたいだな」
「そうだね、本人に言ったら怒られそうだけど」
私というものが居ながら何勝手に盛り上がってるのよ拓人は!明莉ちゃんも明莉ちゃんであー!なんかムカつく!
私は我慢の限界に達して、拓人に抱き着いて明莉ちゃんに威嚇した。
「……むう!」
「ちょっ…苦しっ……!だから悪かったってば…!」
「……喧嘩中?」
「違う…勝手に拗ねて……!」
拗ねてない!今日一日全然構ってくれなかったから構って欲しいだけ!
なーんて口が割けても言いたくない、二人きりやあの二人の前ならともかく、明莉ちゃんの前では言いたくない。
何かを察した明莉ちゃんは優しい目で私を見ていた。
「あー、そういや今日たっくん一日中ぼーっとしてたもんね、そっかそっかうんうん分かるよその気持ち」
これ絶対分かってない奴だ、美咲がそうだし!
私は恥ずかしくなって拓人から離れるけど、ちょっとでも傍に居たいから制服を掴んだ。
「……なによ、拓人が悪いんだからね?」
「その事に関して先程からずっと謝ってるんですけど……」
本日二度目の頭ぽんぽん、イライラしてた私は少し、ほんの少しだけ落ち着きを取り戻した。
そんなので許すわけ無いでしょうが、えへへ。
「……ちょろいね」
「うん、ちょろい…いやちょろインだな」
「ちょろくない!」
☆
二人にからかわれた私はいつもの調子を取り戻して、三人で猫ちゃんの名前を決めようとしていた。
「うーん……なかなか難しいね」
「琴音、別にありきたりで良くないか?」
「でもこんな可愛いし、折角ならちゃんとした名前付けてあげたいじゃない?」
それぞれ候補を出すもどれもピンと来なくて、かなり行き詰まっていた。拓人に関してパソコンのディスプレイで表示された候補名しか言ってないし……
「六月……梅雨……ん?雨?」
そうよ、あるじゃないぴったりな名前が!
「
「あーそっか!今梅雨だもんね!さっすが学年一位で俺の彼女!」
急に誉めないでよ恥ずかしい、あと誉めるにしても誉め方が雑すぎでしょ…あなたの彼女なのは周知の事実でしょうが。
明莉ちゃんだけは理解出来ず、頭を傾けていた。
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