第54話

 いつ振りかの琴音の家に着いた俺達。

 琴音はそのまま家の中へ、俺は久し振りだったのでちょっと緊張していた。


「…今日誰も居ないから」


 そう言いながら琴音は自分の部屋に向かって、俺はリビングへ向かった。




 ☆




 リビングで数分待っていると、制服から私服に着替えた琴音がやってきた。


「早かったな、もうちょっとゆっくりでも良いのに」


「そういうわけにはいかないでしょ?暖かいもの用意するから適当に座って待ってて?」


 琴音はそのままキッチンへ向かって、俺は再びソファーに座り直した。

 琴音は何やら楽しそうに準備していて、俺はその姿を眺めていた。

 その際にこの間結衣に言われたことを思い出していた。


「結婚か…まだ付き合って一ヶ月程なのになぁ」


 俺は琴音が好きだ、一緒に居ると楽しいから。

 でも琴音は俺の事どう思っているのか、正直言って分からないけど、同じ気持ちなのは一緒に居て分かる。


 その事を考えていた俺は、いつの間にか琴音がこっちに来ていることに気付かなかった。


「はい、コーヒーで良かったよね?」


「ありがと、あのさ琴音は…け、結婚とか考えたことある?」


「っ!けほっ…けほっ…い、いきなり何言うのよ!」


 琴音は耳まで赤く、小さく俯いていた。


「考えたことなら…ある」


「そ、そう…俺考えたこと無くて、でも一緒には居たい」


 テーブルの上にコーヒーが入ったコップを置くと、琴音は身体を預けてきた。


「琴音?」


「私達付き合って一ヶ月だけど、そんな実感がないの」


「まあ俺が倒れた時期があったしな…」


 あの事件がなければもう少しお互いを知れたはずだ。


「でもその時に分かったの、私は拓人が居ないと駄目なんだって私が居ないと拓人は駄目になるって」


「俺も同じ、やっぱり琴音が居てくれないと楽しくないなって気付けた」


「ふふっ、案外私達って似た者同士なのかもね?」


 お互い見つめ合い、琴音は静かに目を瞑り顔を近付けてくる。

 そっと口づけを交わす、もう何度目だろう。

 身体の奥底から熱くなり、もっと琴音を感じたくなった。


 俺はそのまま押し倒し、少し強引なキスをする。


「んむっ…!んぅ……ぷはぁ…拓人?」


「悪い、あまりにも可愛かったからつい…」


「……可愛いって言うな」


 今日三度目の口付けを交わそうとしたその時


「ただい…ま……っ!」


 丁度紅音さんが帰ってきて、俺達は固まった。


「え、えと……お、お邪魔だったかな…?」


 琴音と俺は顔が真っ赤になり、琴音と離れ何事もなかったかのようにする。


「お、おかえり…!あか姉」


「う、うん……ただいま」



 えーっと、どうしようこの空気…めっちゃ居づらい!

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