第53話

《拓人視点》


 その後無事に学祭が終わり、六月に入った。

 そんな中、俺達四人の仲は相変わらずで休みの日には良く遊びに行ったりするぐらいになっていた。


 そんなある日、いつも通り授業を終えた俺達四人。

 川島さんと裕貴は先に帰って、俺と琴音はまだ学校に残っていた。

 俺はいつものように一人で本を読んで琴音を待っていた。


「もう…また本読んで」


「ん、おかえりー」


 俺はそのまま本に夢中で視線すら向けずに居た。

 それをみた琴音は本を取り上げ、少しご立腹だった。


「あっ…悪い、集中すると前見えなくなるな…」


「本当よ、全く…酷くなる前に帰るわよ?」


 窓の方に視線を移すと、黒い雲が大空を覆っていて今すぐにでも降りそうだった。


「うん、にしても…途中で降りそうだなこれは」


 この時期の雨って苦手なんだよな…俺




 ☆




 昇降口で俺は大きめの黒い傘を差し、琴音は折り畳み傘を差していた。

 二人で少し距離を置きながら、色々と雑談をしていた。

 そんな時、大きな音がそれに響き渡った。


「っ?!…結構近いわね」


 俺はあまりにも音が近すぎたためか、固まってしまいその場から動けずにいた。

 それを不思議に思った琴音は振り替えってこちらをみる。


「な、なんだよ…?」


「いや、なんで固まってるのかなって」


 いや別に俺は雷が怖いとかそういうのじゃないんだよ?とはとても言いづらい…つーか言えるか!

 なので俺は視線を逸らし何でもないと言い、琴音の前に出るが、その行動が裏目に出てしまった。


「ふぅん…?怖いんだ?


 雷という言葉に反応してしまい、歩みを止めてしまう。


「案外可愛いところあるのね、ふふっ」


 俺は何も言えなかった、小さく溜め息をついて諦めた。


「悪い…?男なのに怖がって」


「ぜーんぜん?むしろ意外な一面が知れて嬉しいかも?」


 なんか腹立たしかったので、仕返しと言わんばかりに琴音が一番苦手とするホラー系統を口にする。


「そうですか…今度一緒にゲームでもやるか?あのシリーズを」


 すると今度は琴音が固まった。


「まあ今も結衣を巻き込んでやってるんだけどな、案外面白いぞ?」


 特に結衣の反応とか。


「絶対に嫌!!」


 琴音は必死になって否定して、涙目になりながら睨み付けてくる姿がめっちゃ可愛い。


「冗談だって、まあお化け屋敷「それでもお断りよ!」


「本当嫌いなんだな…」


 その後俺達は帰ろうとするが、琴音によって止められた。

 よく見ると震えた手で白シャツを掴んでいた。


「…久し振りにうちに来なさいよ」


「…さっきので怖くなったのか」


「違うわよ、馬鹿…」


 涙目になりながら言っても説得力がねえなおい、ただただ可愛いだけじゃねえかよ。

 俺は振り返り、満面の笑みで答える。


「あっ……っ!ほらいくわよ!!」


 そんな彼女の口元はかなり緩んでいた。

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