第48話

《琴音視点》


 拓人が倒れ、そのまま救急搬送。

 辺りは騒然としていて、私達の代わりに保健室の先生が付き添うことになった。


 そんな私は覇気がなく、周りから心配されるぐらい酷かった。

 まともに授業すら受けられない事を理由に早退、私は家に向かわずそのまま拓人が運び込まれた病院へと急いだ。


 数十分後、病院に着いた私は受付で拓人の病室を聞くと急いで向かった。

 その道中にお義母様と出会った。


「あれ?琴音ちゃん?あなた学校は?」


「早退、しました…」


「……そう、拓人なら無事よ、だけど…」


 だけど何だろうか?やはり何かあったんじゃ――


「脳へのダメージが思った以上に深刻で、いつ目覚めるか分からないって…たとえ目覚めても私や琴音ちゃんの事も覚えているかどうか…危ういって」


「そんな…」


 あまりにもショックが大きくて、その場に座り込んでしまった。

 私のせいだ、私が解決させるなんて言わなきゃ良かった…


「琴音ちゃん、あまり自分を責めないで?」


 お義母様はそうおっしゃってくれたけど、今の私は拓人に合わせる顔がない。

 それぐらい酷いことをしたんだ、私は…


 すると、お義母様は私を優しく抱き締めていた。

 まるで、拓人としたような感覚だった。


「…あなたはちっとも悪くない、だからそんな思い詰めた顔しないで」


 その言葉で私の涙腺は完全に崩壊して、おもいっきり泣き叫んだ。




 ☆




 泣き叫んだ後、私は拓人の病室に行き、未だ眠ったままの拓人と対面する。

 まるでドラマのような状態で、機械音だけが鳴り響く。


「拓人…」


 私は近くの椅子に座って、両手で拓人の手を包んで祈るようにしていた。


「…やっぱり私、拓人がいないと駄目なの…だからお願い…早く目を覚まして…!」


 当然といえば当然だが、反応はない。

 でも私はひたすら我慢し続ける、拓人が目を覚ますその日まで。


「拓人の彼女があなたで本当に良かったわ」


「…ありがとうございます」


 私は恥ずかしくて小さく俯いたけど、そう言って貰えて本当に嬉しかった。

 お義母様に認めて貰えたという事が何より嬉しかった。


「そういえば二人は将来結婚はするのかしら?」


「け、けっこ…?!」


 け、結婚?!わ、私が…拓人と…?

 拓人と…結婚…拓人と…うぅ…想像するだけで超幸せなんですけど!?


「あら?その反応を見ると、そういった話ってまだなのね」


「えっと、あはは…考えたことも無かったです…」


 私はもう顔が林檎みたいに真っ赤なのだろう、お義母様は微笑んでるし。


「でもあなたって、小さい時に逢ってるからそういう約束ってしてるものだと…」


 お恥ずかしながら、今までそういった話をしたことないです!したら幸せすぎて私の身が持たない。


「でも何故その事をご存知なのですか?」


「夫と本人から、物凄く可愛くて良い子だって…あの時の拓人は楽しそうに話してたわ」


 もう…拓人ったら…


「早くいつもの日常に戻りたいわね…」


「そう、ですね…早く戻れるといいな…」


 拓人、早く目を覚ましてね?

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