第46話

 その日の放課後、私はいつもの四人で帰っていた。

 雑談してそれぞれ帰っている途中、不意に後ろから声を掛けられた。


「琴音」


「拓人?あれ帰ったんじゃ…」


「あーちょっと、な…」


 よく見ると顔が少し暗い気がする、夕焼けのせいかもしれないけど。


「…少し公園まで来てくれる?」


「別に良いけど…一体どうしたの?」


「…着いたら話す」


 私は拓人から何の話を聞かされるのか、考えながら公園に向かった。




 ☆




「―え?告白された?…いつ?」


「一応言っとくけど断ったからな?琴音がいるからって…」


「でもしつこく迫られた?」


 拓人はこくんと頷き、私に申し訳なさそうな顔をしていた。


「実は今日だけじゃないんだ、ほぼ毎日っていうか…」


「同じ子なの?」


「うん、ごめんもっと早く言えば良かったな…」


 拓人は何でも一人で抱え込もうとするけど、私を頼ってくれたのが何より嬉しかった。

 これ以上、追い詰められた拓人をあまり見たくない。


「ううん、話してくれてありがと」


「…ちょっとだけこうしてていい?」


 そう言って拓人は、体を預けてきた。

 最初のうちはかなりドキドキして顔すら見れなかったけど、今は顔を見れる状態になっても慣れないものは慣れない。


「う、うん…」


 落ち着かせるために手を握ったら、微かに拓人の手が震えていた。

 私が優しく両手で包むと、震えが止まった。


「…相当我慢、してたんだ?」


「…やっぱり付き合ってるといえ、怖くて」


 やっぱり私が知ってる拓人じゃない、皆の中心に居るような明るい男の子だったのに、本当に中学時代に何があったんだろう?

 でも今はまずこの問題を解決しないと…


「その子の名前とか聞いてないの?」


「確か、一年生だった…かな、名前までは覚えてないや」


 一年生か、となれば結衣ちゃんに聞くのが一番か…

 あの子もあの子で、男女問わず人気だから噂程度なら耳にしているはずだろうし、何より実妹だから相談ぐらいはあっても不思議じゃない。


「分かった、何とかしてみるわ」


「ありがと、好きだ…んっ」


「んっ…私も好き」


 もう一度口づけを交わして、お互い帰路についた。




 ☆




 そして翌日のお昼休み、私は結衣ちゃんと一緒に昼食を取っていた。


「昨日お兄ちゃんが言ってた子の名前は、渡辺彩希わたなべさきちゃん、あまり良い噂を聞かないかな?」


「というと?」


「何でも目をつけられた男の子はよく別れるみたい、現にそれが原因で破局したカップル何組か見かけたから…」


 うわあ…最低な奴ね…絶対に別れるもんですか!


「さっき友達からメッセで渡辺さん、今屋上に向かったみたいです」


「…分かった、じゃあ行きましょ」


 待ってて拓人、絶対になんとかするから




 ――でも今の私は、まさかあんなことになるなんて想像もしてなかった。

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