第44話
《結衣視点》
「ふぅー…それじゃあ先生、お疲れ様でした」
「こんな時間まで無理言って悪かったね、柴崎さん」
「いえいえ、好きでやってることなので」
今日は委員会の仕事で少し長引いてしまいました。
もう完全下校時間です、流石のお兄ちゃんも家で待ってるはず。
職員室を出て、生徒ホールと言われる集まれる部屋に出ると奥の席で二人仲良く眠ってる人が居ました。
「…あれ?お兄ちゃんと…琴音さん?」
よく見ると机の上には、大量の教科書やノートがあり今まで勉強をしていた形跡があります。
「ん…こと…ね…すぅ…」
二人ともとても気持ち良く眠ってますが、時間も時間なのでまずは二人を起こします。
「おーにーいーちゃーん!琴音さーん!おーきーてー!」
私は必死になって二人の体を揺すりますが、お兄ちゃんはともかく琴音先輩すらびくともしません。
なので、私は琴音さんに対して最終手段に出ました。
流石にこれは起きるはずです!
『琴音、好きだよ』
私はスマホで隠し撮りしていたお兄ちゃんの独り言、琴音さん曰くイケボ集を耳元で囁く音量で流すと…
「っ…!あれ…私、って結衣ちゃん?」
「そろそろ帰らないと先生達に怒られちゃいますので、琴音さんの力でお兄ちゃんを起こしてください」
私は机の上の教科書類を一つにまとめる作業に入っていると、お兄ちゃんがやっと起きました。
「ん、結衣…おはよ…」
お兄ちゃんは琴音さんに体を預けながら寝惚けてて、琴音さんの顔が真っ赤に染まってました。
「…寝惚けてても可愛すぎなんだけど」
「見惚れる場合ですか!さっさと起こして帰りますよ?!」
目を離すといっつもこうなんだから!
☆
私達はなんとか学校を出て、帰宅中。
右に琴音さん、真ん中にお兄ちゃん、左は私で相変わらずの二人で私は少しだけ寂しさを覚えてました。
もうお兄ちゃんに甘えることすら出来ないんだなと、一歩後ろに引いていました。
「結衣?なんか悩み事か?」
「ううん、仲良いなって…思っただけ」
心配かけたくない、でも小さい頃のようにずっと一緒じゃない、それがどうしても受け入れられない自分が居ました。
自分の傍から離れていかないで、なんて淡い気持ちを抱きながら…
気付けば、私は泣いていました。
「結衣?一体どうした?俺なんかやったか?」
「違う…違うの!なんで…ひっぐ…なんで止まらないの…!うわああああん!!」
止めようとすればするほど、涙が出てきて、寂しい気持ちが強くなっていきました。
「もっど、いっじょにいだがったのに…いだいだけなのにぃ…!」
「結衣…」
「やだぁ…やだよぉ…!いかないでぇ…!お兄ちゃん!」
私はとにかく寂しく、近くに居るはずなのに遠くにいっちゃった感じがあり、グッと力を込めて抱き付いていました。
「…結衣ちゃん、拓人が遠くにいっちゃって寂しかったんだね?」
琴音さんはそれに気付いてくれて、私はこくんと頷いた。
「そっか…なんかごめんね?」
琴音さんは優しく頭を撫でながら小さく微笑んでくれました。
私はそれがとても気持ちが良くて、気付けばすっかり泣き止んでいました。
「私も一応妹だから、その気持ちちょっとだけ分かるわ」
お兄ちゃんは何も言ってきませんが、琴音さん同様に私の大好きな表情をしていました。
「…結衣、お前が俺の妹である限り、遠慮せずにいつもみたいにどーんと甘えてこい、しっかり受け止めてやるから」
「…うん!えへへ」
今はずっとこうしていたいけど、二人の邪魔はしちゃいけないなと思い、涙を拭いてお兄ちゃんから離れ、二人の手を繋ぎ逢わせました、二人は驚いてたけど。
「お兄ちゃん!こと姉!大好き!!…よし、かえーろ」
―私、今ちゃんと笑えてるかな?
「そうだな、帰ろう琴音」
「ふふっ…ええ、帰りましょ」
―二人が笑ってるなら大丈夫かな!えへへ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます