第43話

 裕貴と川島さんと琴音と俺の四人で行ったダブルデートから数日が経ち、連休が終わって学校が始まり、いつもの日常に戻っていた。


 ただ一つだけ違うとすれば、この四人でよく遊ぶ頻度が増えたことだ。

 現に今も…


「え、ボーリング?」


「なんでも今度は個人で、って美咲が言ってたわ」


「…今回はパスして良い?課題溜まっててさ」


 俺は三人と違い、学がない。

 しかもよりによって、今日は課題が出やすい日であった。


「英語に数学、物理に…って何よこの量は…」


「そこは担当教師に言って…絶対終わんないっつーの」


 英語はなんとかなるけど、数学や物理は全く出来ず、文系なんて全く駄目。

 毎回赤点の俺は、この量をどうすれば良いか悩んでいた。


「拓人が行かないなら私も行かない、早く終わらせちゃいましょ?」


「いつも悪いな…折角楽しみにしててくれたのに」


「いつでも遊びに行けるわよ、それで何が分からない?」


 琴音は笑って許してくれる、けど大変申し訳ないです。


「…英語以外全部、特に文系科目が駄目です」


 いっつも小説読んでるのにな?なんでだろう。


「じゃあ古文から行くわよ?ここは―――」




 ☆





「終わったー…頭痛いー…」


 俺は机に倒れ、なんとか完全下校時刻前に終わらせることが出来た、代償は大きいけど。


「お疲れ様、まさか基礎がなってなかったとはね」


「しょーがねえじゃん…中学殆ど行ってなかったし」


「筋は良いのに、まともに勉強しなさいよ?」


 琴音はそういうけど、今の俺はそんな気分じゃなかった。

 俺はイチャイチャしてたいんじゃー!


「いっつも思うけど、琴音の眼鏡って伊達?それともマジな奴?」


「ん、これ?目が悪いから一応ね」


 琴音の眼鏡をかけた姿はいつ見ても可愛い、なんというか凄く似合っている。


「拓人は普段学校だとか出掛ける時は眼鏡かけてるのに、なんで家ではしないの?」


「目が悪いのは事実だけど、一番の理由はイメチェン…かな?」


「イメチェン?どうして?」


 俺は懐かしむように眼鏡を外し、小さく笑った。


「少しでも印象を変えるため、かな…ほら俺ってあんまり格好良くないから…」


「そんなことない、私からすれば…格好良いよ…?」


「ありがと、でも皆が皆、そう思ってくれるとは限らない」


 中には快く思わない人だって居るんだと言う事実を知ったから。


「今は琴音が居るから、気にしないようにしてるけどね」


「そう…っと、そろそろ帰りま――しょ?」


「…もうちょっとこうしてたい、な」


 俺は琴音に凭れる感じで、ピタッとくっついた。

 琴音は最初の方は驚いていたけど、次第に琴音も一緒になって傍に居てくれた。


「…少しだけよ?もう」


 俺はよっぽど疲れていたのか、そのまま眠ってしまった。




 ☆




《琴音視点》


「すぅ…すぅ…」


 拓人は眠ってしまった、でもこうしてくっついていられる時間が好きだ。

 家に帰ってしまえば、明日まで逢えない。

 家が近ければ問題なかったが、ちょっと遠かった。


「ふふっ…かーわいい」


 なかなか一緒に居られる時間がなく、選択科目も殆ど違う上に席も遠かった。

 普段から遠くでしか眺めることしか出来ない私、そんな私にとってはこれは至福の時間だ。


「席替え、あれば良いな…」


 もしあるとするなら、隣同士が良いな…なんて思ってみたり。


「んんっ…すぅ…」


「私もちょっと疲れちゃったな、おやすみ拓人…」


ちょっとぐらい、良いよね…眠くなっちゃったし


 私達二人は仲良く眠ってしまう、完全下校時間が迫ってると言うのにも関わらず。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る