第28話
《拓人視点》
「ただいまー…結衣?居ないのか?」
両親は旅行中で家を空けているが、さっきから呼んでいる結衣まで居ないとなると俺一人。
まずは自室に戻って部屋着に、着替えようと思って入った瞬間にスマホが震え出した。
『急でごめんなさい、今日は友達の家に泊まります!明日必ず帰るから!』
結衣からだった。
内容を見て俺は小さく息を吐き
「マジかよ…夕飯どうすんだ…」
一人で嘆いていた。
☆
あれから小一時間程経った今、ボーッとしていたソファーから立ち上がって夕飯のためにキッチンへ向かう。
昨日の夕飯の残りと朝炊いた白米で夕飯を済まし、食器を洗浄機へ入れてソファーに再び戻った。
琴音に明日どうするか聞くために、メッセを送る。
「お、きたきた…えっ?」
内容は実にシンプルだが、付き合って間もないはずなのに展開が急すぎる。
『拓人の家に行きたい』
俺は悩みに悩んだ、琴音を家に呼びたいけど、両親どころか今は結衣すら居ない。
流石に付き合って三日で、半同棲みたいなことをする勇気がない。
「琴音を呼べば二人きりだけど、結衣はいつ帰ってくるか分かんないし、両親は夕方帰ってくる…」
俺は琴音にいいよと送ったけど、流石に俺以外誰も居ない事も伝えた。
ちょうど送った時に珍しく呼び鈴がなった。
「はーい、今行きます」
俺は玄関へ向かい、ドアを開けるとそこには何故か明莉が居た。
「ごめんね急に、おばさんたちからさっき連絡あってたっくん今日一人で心配だからって…」
「…心配なら連絡ぐらい先にこっちに入れろ」
「あはは…ねえたっくん」
急に真剣な顔になり、少し頬を赤くしながら俺に向かってこう言ってきた。
「き、今日一人で心配なのは…私も同じだから…泊まって良い…?」
「…珍しいな、明莉がうちに来るのは小学生以来だっけ」
「憶えてたの…?」
何故か懐かしく感じた俺だったが、同時に嫌な予感がする。
これ明日やばくねえか…?
「たっくん…?」
「ん、ああ…別に良いけど」
すると突然、いきなり明莉が抱き付いてきた。
けど今の俺は抱き返せない、もう彼女が居るから
「…明莉」
俺は申し訳半分で冷たく言い、引き離れた。
流石の明莉も申し訳半分で、謝ってきた。
「じ、じゃあ上がるね…!」
と言って俺を置いて明莉はリビングへと向かった。
「…明日琴音にどう説明しよう」
明日は地獄だ…
☆
明莉には結衣の部屋を使わせて、お互い風呂を済ませ就寝準備に入った。
「はぁ…明日が怖くて寝れねえ」
両親は知らないから仕方ないとはいえ、どうして俺は泊めることを認めたんだよ…
すると部屋のドアをノックする音が聴こえた。
「…たっくん、入っていい?」
「あ、あぁ…話ぐらいなら」
明莉はドアを開けて、俺の部屋に入ってきた。
「…たっくんの部屋は変わってないね」
「結衣が変わりすぎなんだよ」
俺は起き上がり、ベッドの上に腰掛けた状態になり、明莉は隣へ腰掛けた。
距離こそ空いてはいるが、手を伸ばせば簡単に届く。
「…れいちゃんから聞いた、告白されたんだって?」
「断ったけど、本当にビックリした」
「…たっくんの好きな人って誰?」
俺はドキッとした、もしかして知ってて聞いてるのかと。
「…明莉には関係ないだろ」
「ある、関係あるよ…幼馴染だもん」
「幼馴染か…」
俺は壁に飾ってある、とある一枚の写真を見る。
「そういうことなら俺も明莉と出会う前に幼馴染はいたよ」
その言葉に明莉は驚き、俺の視線の先を辿った。
その写真を見て明莉は言葉を失った。
「…この写真」
「産まれた時からずっと一緒だった相手、小学校に上がるまでだけど」
そう言い、俺は壁に飾ってあった写真を手に取り、机の引き出しに隠す。
「…ごめん、明莉」
「え?どうしたの?」
「実はさ―」
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