第20話 二人の告白
ゴールデンウィーク二日目、柴崎拓人は琴音を待っていた。
拓人はスマホの画面を見ながら、髪を少し弄っていた。
「ちょっと長くなったな…今度髪切りに行くか」
そんな彼を見つけた琴音、だが彼女は昨日の告白を聞いていたせいか、いつもと様子が違っていた。
「お、おは…よう」
だが彼も同じで少し意識していた。
「お…はよ…」
「「……」」
互いの頬は少し赤く、鼓動も早かった。
行き先を聞くために拓人は琴音に質問をしていた。
「そういや上野…どこに行くの?」
「えと……水族館、なの」
そう言いながら琴音は拓人の腕を抱きてきた。
「ちょっ…!~~~っ!」
「……ほら、しっかりして…私だって…その、恥ずかしいんだから…!」
二人は無言ながら、近くの水族館に向かった。
☆
この状況に慣れてきた二人は、気付けば水族館まで来ていた。
「おー、でかいな…ここ」
「本当ね、じゃあ行きましょ?あ、チケットはあるから気にしないで」
二人は受付にいき、チケットを渡す。
その際にひとつ問題が起きた。
「か、カップル限定…!?」
「はい、ですのでお二人がカップルであるの証明を示していただきたいのですが…」
「えと……その……」
琴音は顔を真っ赤にして、どうやってこの条件を達成すればいいのか考えていた。
そんな琴音を見て拓人は思い切った行動を取る。
「ちょっと拓人…えっ――!」
「…あの、これでいいっすか?」
「はい!では楽しんでください!」
頬にだが、琴音にキスをしてこの場を切り抜けた拓人。
またお互いは朝のような状態に戻ってしまった。
☆
「「……」」
気まずい雰囲気のまま、お互い無言で鑑賞していた。
拓人はこのままではいけないと思い、琴音に謝った。
「あ、あの…さ!上野、さっきは悪かった…」
「気にしないで、私的には助かったから…」
「そか、そう言って貰えるだけの事をしたのかな」
そう言い水槽へ顔を戻す拓人。
琴音はそんな拓人の横顔を見て、そっと服の袖を掴んだ。
「上野?」
「…なの」
「ごめん、良く聴こ―」
「―貴方の事が好き!!なの…でも、本当は今日で諦めようと思ったの」
思わぬ発言に面を食らった拓人は、黙って琴音の話を聞いていた。
「でも貴方にあんなことされたら…嫌でも諦めきれないじゃない…」
拓人は今の言葉を聞き、真剣な表情になり
「…上野、いや上野琴音さん」
静かに深呼吸をして
「一度振ったとはいえ、こんなこと言うのはおかしいけど…貴女の事が…好き、です…」
驚いている琴音を見て、拓人はもうひとつの告白をする。
「幼い頃からずっと…好きでした!だから…その…俺と付き合ってくれますか?」
「ちょ、ちょっと待って…幼い頃?私達は高校で初めて出会ったんじゃ…」
「まあ十年も前だし無理もないか、俺達は幼い頃にちゃんと出会ってるよ、ことちゃん」
琴音の事をことちゃんと呼ぶのは、思い出しても彼しか居なかった。
「えっ、それじゃ…あのたくくん…なの?」
「うん…って言っても、俺もつい最近思い出したばかりだけどね…ってどうしたの?!」
「ぐずっ…もう二度と逢えないと思ってたから…嬉しくて」
「はいハンカチ、もう泣かないでことちゃん」
拓人は幼い頃同様、琴音に優しく微笑んだ。
琴音はその姿が、昔と何一つ変わってないことに安堵した。
「で…返事、どうかな」
「安心なさい、もう答えは決まってるわ」
拓人と少し距離を取り、優しく微笑みながら振り向いて
「これからよろしくね、拓人」
――二人は仲の良い友人から恋人同士になった。
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