第19話

《拓人視点》


「初めて会った時から好きでした!私と付き合ってください!」


 人生で二度目の告白を受けた俺なのだが、初めて受けた時よりか早く答えは決まっていた。


「…ごめん、君とは付き合えない」


「…どうして?」


「どうしてって言われても…」


 渡邉さんとの関係に影響が出ないように、どうすれば納得して貰えるか非常に悩んだ。


 不意に誰かに見られてるような気がした。


 気付かれない様に辺りを目配りすると、何故かそこには上野が居たのだった。

 幸い目が合うようなことはなかったが、昨日の今日のせいか上野の顔を見ると急に胸が締め付けられた。


 気付けば俺は無意識に、こう述べた。


「…他に好きな人がいる」


「そっか…」


 この一言で、渡邉さんは今にでも泣きそうな顔をしていた。

 だが一瞬でいつものような明るい表情に戻り、続け様にこう言った。


「ちなみに相手は誰かな?あ、言えないなら別に―」


「―上野琴音、名前ぐらいは聞いたことあるだろ?」


 俺がそう伝えると、渡邉さんは急に怒り出した。


「…なの、なんでなの!?柴崎君フッたんじゃなかったの?!なのにどうして…!」


「自分でもよく分からないんだ…なんで好きなのか」


「えっ…」


 渡邉さんが驚くのも無理もない、俺自身が一番驚いてる。


「…でも、俺は上野の事が好きなんだ」


「……そか」


「なんかごめん…」


 渡邉さんはまた泣きそうな顔をしていたが、心配させまいと無理と笑っていた。


「謝らないで、柴崎君は何も悪くないんだから、何も…」


「わ、分かった」


「ごめんね引き留めちゃって、もう帰った方がいいよ?」


「いや、でも…」


「…お願い、一人にさせて」


 俺は暗い表情の渡邉さんに言われ、分かったと告げそのまま帰路についた。


 その後渡邉さんは一人、静かに泣いていた。




 ☆




「…ただいま」


「お帰りって…どうしたの?そんな暗い顔して」


 出迎えてくれたのは、母さんだった。


 ということは結衣はまだ寝てるのかと思っていたら、眠そうな顔でぬいぐるみを抱き締めながら二階から降りてきた。


「あ~、にぃにだ~…」


 抱き締めていたぬいぐるみを離して、そのまま俺に抱きついてくる。


「お、おい結衣…は、離せ!暑苦しいから…!」


「んんぅ~!……すぅ…すぅ…」


「おい、抱き着いて立ったまま寝るな!もう昼だぞ!」


「にぃにうるしゃい…」


 いや、うるさいじゃねえ!お兄ちゃんさっき色々あって疲れてんだよ!


「こら、結衣?止めないとあなたの好きなカレー食べるわよ?」


「っ!分かったからそれだけは止めて!」


 結衣は俺から離れ、母さんに文句を言っていた。

 俺は溜め息をついて、リビングに入った。


(いっつも思うけど、どんだけカレー嫌いなんだよ…)

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