第17話
翌日、俺は一人で近くのスーパーに来ていた。
ゴールデンウィーク初日とはいえ、やはり人の量はかなりのものだった。
「結衣の奴…いきなりあんなこと言いやがって…」
結衣がどうしても着いていくと聞かなかったせいか、一番暑い時間帯に出てきてしまった。
「ん…?あれは…」
店の入り口にいたのは、まさかの明莉だった。
何の偶然か明莉もこちらに気付いて、俺の傍まで近付いてきた。
「あれ、珍しいね。たっくんも買い物?」
「母さんに頼まれてな、出掛ける前に色々あったけど…」
「そっか…ねえたっくん」
明莉は小さく俯き、小さな声で
「い、一緒に…行っても良い…?」
一瞬、上野の顔が脳裏に過った。
今は明莉がいるというのに…と心の声で呟いていると
「な、なんか言ってよ…!今すっごい恥ずかしいんだから…!!」
気付けば顔を真っ赤にした明莉が俺を睨んでいた。
でも俺は何故か笑いを堪えるのに必死だった。
「ぷっ…くくっ」
「っ~!もう!笑うな!」
「だったら言わなきゃ良かっただろ…くくっ」
明莉は恥ずかしさから羞恥に変わって、再度怒りを露にした。
「~~~!たっくんのバカああああああああああ!!」
☆
「「……」」
結局俺は、明莉と一緒に店内に入って、お目当てのものをカゴの中に入れていた。
しかし先程のもあってか会話はなく、頬を膨らませながら一人でブツブツと言っていた。
どうしたものかなと考えていると、不意に後ろから声をかけられた。
「あれ、明莉に…柴崎君?」
振り向くと、俺達のクラスメイトの一人で明莉の中学時代の友人の
「あっ…!」
明莉は咄嗟に俺の後ろに隠れた。
「あーかーりー?今更隠れたって無駄だよ?」
「うぅ…一番会いたくない時に…」
「ちょっ、それ親友の私に向かって言う台詞!?」
えっと…こういう時俺どうすれば良いんだろう?というか渡邉さんがずっとこっち見てるんだが…
「…っと、柴崎君ごめんね」
「…別に気にしてない」
「そかそか、お二人は買い物デートですか?」
何をどう見たらデートに見えるんだ?買い物なんて誰だってするだろ?と心の声で突っ込んでると、また明莉の顔が真っ赤になっていた。
「デート…買い物デート…」
「おーい明莉、帰ってこーい?」
「はっ!?…えへへ」
渡邉さんは頭を抱え、俺を少し儚げな顔で見ながら
「……いいな」
と、呟いていた。
いつも元気一杯な彼女が何故あんな事を言ったのか、理解は出来ないがある程度の予想は立てられる。
「明莉当分の間帰ってこなさそうだし、柴崎君ちょっと良い?」
「えっ、でもこのまま放っておく訳には…」
「……お願い」
と無理矢理腕を引っ張られてその場をあとにした。
明莉の心配もしながら
☆
俺達はレジで会計を済ませた後、近くの公園に来ていた。
渡邉さんはベンチに座り、俺に対してこう言った。
「…柴崎君って、明莉の事どう思ってるの?」
「どうと言われても…幼馴染としか」
「そうじゃなくて…なんていうか…い、異性として?って言うのかな?そういうのないのかなー?なんて…」
残念ながら明莉に対して、そういった感情は一度も持ったことはない。
あくまで友達として接している俺は明莉を異性として、一人の女の子として見れない。
「一度もないよ、そういうの」
と少し間を開けて渡邉さんの隣に座った。
渡邉さんは二、三回程と深呼吸をし
「た、単刀直入に言います…初めて会った時からずっと好きでした!私と付き合ってください!」
俺は人生二度目となる、告白を受けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます