第14話

 翌日俺は、悠衣を待っていた。


「ごめんにぃに、おまたせ」

「じゃあ、いってきまーす」

「いってきまーす」


 誰も居ない我が家、両親は居るけど、母さんの方は出勤時間が早い時がある。

 たまに一緒に出たり、逆に俺達より遅く出ることもある。



「お兄ちゃん今日終わったら、明日から連休だね」

「だなぁ…今年も何処か遊びに行くか?」

「うん、じゃあいつもの日に!」


 雲一つない青空、俺達兄妹は普段と変わらず登校していると、曲がり角で明莉と出会う。


「おはよー、明莉ちゃん」

「…あっ、おはよ悠衣ちゃん」


 明莉は悠衣と挨拶をして、俺を見てくる。

 だが、少し顔が赤い…?ような気もする。


「…お、おはよ…たっ…くん」

「おはよ」

「?」


 悠衣は不思議に思いながら、首を傾げていた。


「明莉ちゃん、昨日なんかあった?」

「う、ううん!何もないよ!」


 明莉は顔と手を左右にブンブンと振りながら、述べた。


「じゃ、じゃあ行こっか!学校!!」


 悠衣と別れるまで、終始このペースだった。


 ――――――――――――――――――――――――――



 特に何も起きず昼休み、明莉は友人と裕貴は学食に行き、俺は独りで教室で弁当を食べてると


「拓斗、一緒に良い?」


 上野がやってきた。

 流石に口におかずを入れたばかりなので、俺は合意の意味で頷いた。

 前の席の椅子をこちら側に向け、小さな弁当箱を俺の机の上に起き、上野も昼食を取る。


「上野も親に作って貰ったのか?」

「えっ、と…今日は自分で作ってみたの」


 と恥ずかしながら呟き、少し俯いてた。


「普段料理するのか?俺は出来ないこともないけど、悠衣が居るしさ」

「晩ご飯はいつも作ってるの、うちの親忙しいから…」

「お互い大変だな」


 その後はお互い世間話や、雑談をしながら昼食を取り終わる。

 俺は弁当箱を片付けていると、上野が真剣な顔をしてこう述べた。


「ねぇ……今度の連休、予定ってある?」

「んー、今のところは三日に悠衣と遊びに行くのと、明莉とどっか行くぐらいか?」

「…そう」

「と言っても、その日と明莉と出掛ける日以外は、特に何もなければ家に居るぞ?」


 決してぼっちと言うわけではないが、休日ぐらいはゆっくりしたいだけで俺だって遊びには行く。

 なんて考えていると、上野が


「わ、私もその…何処か遊びに行きたいなぁ…なんて」


 顔を赤くしながら俯き、呟いた。


「?まあ、上野がそういうなら俺は構わないけど…」

「じゃあ!二日はどう…?」

「いいよ、その日は用事はないし」

「じゃ、じゃあ…九時半に駅前で集合ね」


 と、顔を赤くしながら上野は優しく微笑んだ。

 ―ドクンッ

 上野はクラスの中でも、かなりの人気者で笑っている顔は、よく目にしていた。

 でも何故か、何気ないこの笑顔に俺は目を奪われた。

 

 それと同時に、夢の中で出てきた謎の少女の笑顔と、上野の笑顔が重なった。

 顔が更に熱くなるのが分かり、俺は顔を逸らしながらこう呟いた。


「……わ、わかった」


 その後何か言ってたような気がしたが、よく覚えていない。

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