第12話
《拓斗視点》
俺と明莉は、下駄箱前まで来ていた。
外は部活動に励んでいる生徒の声が、あちこちで聴こえていた。少し元気がない明莉、不意に俺にこう呟いていた。
「…もうすぐゴールデンウィークだね」
「もうそんな時期か」
「早いよね、この間入学式終わったばかりなのに」
俺達は自分らの下駄箱から靴を取り出し、履き替える。
「そういやたっくん、ゴールデンウィーク何処か出掛ける予定ってある?」
明莉はこの大型連休の予定を聞いてきた。
現時点では、まだ何処かに誰かと行くという予定はない事を明莉に告げると
「そっか…じゃあどっか行かない?………二人で」
「いいね、久し振りに何処か行くか」
小学生以来だが、明莉と遊びに行く。俺は少しだけ嬉しかった。
明莉はどう思っているんだろうか?と横目で彼女の顔を見ると頬は赤く染まっており、嬉しそうに笑っていた。
「場所は私が決めても良い…かな?」
俺は誰かと遊びに行くと言ってもゲーセンぐらいしか思い浮かばない為、いいよと告げた。
「じゃあ決まったら連絡する…えへへ、帰ろ?」
まるで子供のようにはしゃいでいる姿は、少し懐かしく感じてしまった。同時に少し頭痛が起き、ふらついてしまった。
「た、たっくん?!だい―きゃっ!」
俺は明莉と一緒に床に倒れ込んでしまった。
「いててっ…大丈夫か?明莉」
「……っ!う、うん…」
幸い怪我はなかったようだ。良かった…
が、よく見ると俺は明莉を押し倒しているような感じで覆い被さっていた。明莉は耳まで真っ赤だった。
「っ?!わ、悪い!」
俺は慌てて飛び起き、その場から離れた。
その後明莉はゆっくりと起き上がり、鞄に顔を埋めていた。
「か、帰るか…」
「…うん」
――――――――――――――――――――――――――
「「……」」
俺達二人は物凄くぎこちない雰囲気の中、帰路に就く。
明莉は少し落ち着いたとはいえ、まだ顔が赤いままずっと俯いている。
「なぁ…明莉」
「っ!…な、何?」
まだこちらを見てくれないが、返事は出来るようだ。
俺はふと昨日上野に告白されたこと、今日屋上で明莉に対して自信の想いをぶつけられたことを思い出す。
上野はこんな何の取り柄もない、冴えない俺の事を好きだと言った。断ったとは言え、振り向かせると告げられた。
だけど、今の俺は過去にあったとある事件のせいで、一部の感情が殆どない。その為、好きっていう気持ちが分からない。
いくら考えても答えが出ない、だから思い切って明莉に聞いてみた。
「…好き、ってなんだろう」
「えっ―」
「恋って…なんだろう」
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