第11話
「う、上野さん!あなた何やって―」
「確かに私は今朝言われた通り、拓斗とは付き合ってないし、振られたわ……でもね」
上野は少し暗い顔をし、明莉に向かって、こう述べた。
「私は!…私はそれぐらい…拓斗の事が本気で好き…なの…」
「上野さん…」
「拓斗、それに倉本さん…あの時とさっきはごめんなさい」
そう述べた上野は屋上を後にした。
その時の上野の顔は、何故か忘れられそうにない程のものだった。
「琴音…」
俺は無性に自分に腹が立った。
――――――――――――――――――――――――――
時は過ぎ、放課後。
上野と悠衣は私達二人で話があると言い、先に帰った。
俺は何時ものように、放課後普段は誰も居ない教室で、静かに本を読んで時間を潰そうと思ったが、明莉が居た。
「…たっくん、ちょっと良いかな…?」
明莉は表情は少し暗く、おまけにあの後からずっと元気がなかった。
互いに幼馴染みと言うのもあって、午後の授業は無理をしていたのが分かっている。
かく言う俺も、ずっと上の空だった。
「昼休み…の事だろ」
「…やっぱりバレちゃってたか」
「…幼馴染みってこと、忘れるな」
俺は少し恥ずかしく顔を背けたが、明莉はいつもの表情に戻ったようだ。
「たっくん、変わったね」
「そうか…?」
「うん、だって…皆の中心に居る男の子だったもん」
やはり明莉は、仲が良かった時の記憶しかないようだ。
悠衣や両親から大体の事は聞いているはずだ。何故俺がこんな性格になったのか、中学に何があったのか。
「色々あったんだよ…色々」
「…そっか」
明莉はこれ以上何も聞いてこない。今はまだ話せないが、いずれは話す時が来る。それでは待ってくれ…
「たっくん、久々に一緒に帰ろ?」
「いいぞ、帰るか」
▽▽▽
《琴音視点》
私と悠衣ちゃんは近くの喫茶店で、二人で来ていた。
昨日、私から相談に乗って欲しいとお願いをしたからだ。
「悠衣ちゃん、お昼はごめんなさい、あんなことに」
「別に気にしてません、それより!」
悠衣ちゃんは私にこう言ってきた。
「私の事は悠衣で!」
「はいはい…じゃあ悠衣」
「はい、なんですか?って相談でしたね」
彼女は私の想い人の妹ではあるが、その前に私達は友人同士だ。
度々こうして二人で遊びに行くこともある。勿論、相談だってする。
「相談の事…なんだけど…」
今から相談するって時に、お昼の事を思い出してしまい、顔が熱くなる。今でもあのときの自分はどうかしてる。
彼に振られたとは言え、やっぱり諦めきれない。だから私は、思い切って悠衣にこう言った。
「ど、どうすれば…拓斗に…振り向いて貰えるかな…」
私はさっきからうるさい胸を押さえ、更に顔が熱くなるのと同時に、こうも思った。
――倉本さんには、負けたくない!と
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