第10話
昼休み、俺と悠衣と上野と明莉は屋上に来ていた。
いや、正しくは俺が来させたようなものか。俺は屋上にあるベンチに座って、あとの三人は冷たい床で正座している。
「…なぁ、お前らなんであんなことしたんだ?」
俺は三人にそう言いながら、先程の出来事を頭を抱えながら思い出していた。
――――――――――――――――――――――――――
時は戻って、悠衣が俺に抱き付いてきた時。
一触即発なこの空気。俺は廊下の天井を見上げていた。
「…悠衣ちゃん?なんでここに?」
「んー?なんかお兄ちゃんに呼ばれた気がしたから?」
だから呼んでねえよ!つーか悠衣離れろ…!地味に苦しいから…!
「あの…悠衣さんそろそろ離してあげた方が……拓斗が今すぐにでも死にそうな顔してるんだけれど」
「いい加減にしろお前ら!さっさと離れろ!」
俺はそう叫ぶと、上野と明莉は互いを牽制し合いながら腕を離してくれた。だが、悠衣だけは離さなかった。
後ろには向けない為、顔を見せられないのは仕方ないこと、けど明莉が、まるでこの世の終わりを、見ているかのような表情をしているので、雰囲気は伝わっただろう。
俺は深く深呼吸をし、悠衣にこう言い放った。
「……ねえ、悠衣ちゃん?離れよっか?お兄ちゃんが怒らない内に……ね?」
「……は、ひゃい!ご、ごめんなさいお兄ちゃん!!」
悠衣は離れ、俺から距離を取る。
上野は何が起こったのか分からない顔をしている。
まあ無理もな―授業開始のチャイムが鳴った。
「なぁ、お前ら…」
「「は、はいっ!」」
「な、なによ…」
「今すぐ戻らねえと怒られるから、昼休み、屋上に来い。それだけだ上野、明莉行くぞ」
「「「は、はいっ!」」」
――――――――――――――――――――――――――
そして今に至る。
あのあと何故か俺だけこってり叱られて、挙げ句の果てにクラスの男子からいつも以上の殺意の視線を向けられた。
俺がなにしたって言うんだ。
「わ、私はちゃんと言ったもん!迎えに来たって!」
「…明莉?」
「ヒィ…?!」
んなそこまで怯えなくても…
「悠衣も、なんであんなことしたんだ」
「…えへへ」
駄目だコイツ…完全に思い出してやがる。
「…はあ、元はといえば、俺が一人で片付けに手間取ってたのが悪いから、明莉は最もなことしてたんだろうけどさ」
「…」
「だからって、何も上野と――」
「「それとこれとは話が別(!)」」
上野と明莉はまたさっきと同じ様に睨み合っていた。
「大体!なんでたっくんは上野さんと一緒に居たの?!」
「…そんなこと俺に聞かれてもな」
何故上野が俺を待ってたのか、流石の俺も分からない。
だが何か言わないと後が面倒臭い…何か言い訳をと、考えていたら上野が俺に
「!?」
「んっ…」
「んなっ…?!」
――頬にキスをした。
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