第9話
俺は皆と少し遅れて体育館を出た。最後まで片付けをしていた為に時間が経ってしまった。
片付けが終わり、自分のクラスに戻る為に外へ出ると上野が空を見上げながら独り言を呟いていた。
「どうした上野?一人でブツブツ言って」
「―えっ…!?」
急に声を掛けたせいで驚いていた。というか、コイツいっつも顔が赤い気がする。熱でもあるのか?
「…上野?」
「えっと…な、何?」
「いや、どうしたのかなって」
俺はそう言って上野からの言葉を待つが、偶然にも目があってしまった。顔が赤いのも相まってか、凄く可愛く見えて見惚れていた。
「!…さ、さっさと教室戻るぞ」
「そ、そうね!戻りましょ…」
…あれ?なんで俺、こんなにドキドキしてるんだろう…?
――――――――――――――――――――――――――
俺達は何とも言えない空気の中、クラスに戻った。
隣に居た上野が、ずっと俺を見ていた気がした。顔が赤くなってたのバレたかな…?
「ふふっ…なんか良いわね」
「何が?」
「こうやって、教室戻るの…」
いきなり何言うんだ?俺達恋人同士でもないだろ?と言えなかったが、まるで付き合ってるみたいに言ってたのは否定した。
「一応確認だが、俺達は別に付き合ってないぞ?」
「…分かってるわよ、それぐらい」
上野はそう言い、俺の制服の袖を掴んできた。
「―たっくん…?」
って、なんで明莉がここに…?先に帰ってたんじゃないのか?
「…んっ、たっくん早く行こ?」
そう言って明莉は、俺の左腕を掴んで上目遣いで、訴えてきた。まるで上野が居ないみたいに…
逆に上野は、俺じゃなく明莉を睨んでいた。
「あら、私も居るんだけど?」
と言いながら、今度は右腕に抱き付いてきた。よく見ると頬を膨らませ、明莉を威嚇するような感じだった。
…って、上野さん!?右腕になんか柔らかい感触が…
「たっくん!早く戻らないと授業間に合わないよ!!」
「拓斗、早く戻るわよ」
「私はたっくんを迎えに来たの!上野さんは先に帰れば良いでしょ!?」
「どうしようが私の勝手でしょ?」
「むぅ…!」
「んー…!」
上野と明莉は互いを睨み合い、互いに腕に力を入れていた。上野これ以上は辞めろ!理性が持たんから!!
俺は小さく息を吐き、現実逃避をするような感じで遠くを見つめていた。
誰かに助けを求めたいけど、なんか逆に俺の立場が危うくなりそうな感じがする…
八方塞がりって奴か?はぁ、こんな時に悠衣が―
「あ!お兄ちゃんだ!!」
後ろから悠衣に抱き付かれる。二人は悠衣を見て驚いていた。それもそうだろう、なんでこの場に悠衣が居るんだ…
「んー?なんかお兄ちゃんに呼ばれた気がしたから?」
いや呼んではねえよ!更にややこしくなったわ!
俺なんでこう毎日のように美少女に抱き付かれるんだろう。というか…
――どうしてこうなった…?
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