第8話
《琴音視点》
私はあれからずっと拓斗を見ていた。他の皆も上手かったけど、彼だけは別格な気がした。
拓斗はこういった試合に負けるとかなり悔しがる。負けず嫌いな性格なのは本人から聞いている。
そして試合が終わり、彼がいるチームが勝った。
「おっしゃー!」
「いやー、マジで芝崎ってすげえわ」
「芝崎が居ると勝てるってホントなんだな」
拓斗と同じチームの人達が、彼を褒め称えている。彼らの言う通り、拓斗は凄かった。
―そういやあの時のシュートが決まった顔凄く格好良かったなぁ…
「そんなことない、皆も頑張ったから勝てたんだ」
「ははっ、そうだな!」
皆笑顔だった。普段からクールな拓斗も、流石に今回ばかりは笑顔だ。その顔を見て私は
―ドクンッドクンッ
と心拍数が上がって、顔が熱くなって、彼の笑顔に心奪われていた。
「ふふっ、琴音はホント芝崎君の事が好きだね」
「うっ…」
「もう…耳まで赤くしちゃって」
う、うるさいな…!仕方ないでしょ!あんな表情は滅多に見れないんだから!
――――――――――――――――――――――――――
体育が終わり、私は一人で体育館前で拓斗を待っていた。
早く逢いたいなぁ…なんて想いながら
私は壁に凭れ、天を見上げてた。
「…惚れさせる、か」
私は昨日そう言ってしまった。フラれたはずなのに、でもフラれたって思いたくなくて…本当なら泣きそうだった。
でも泣けなかった。
他に好きな人が居ると言われた方がマシだった。それなら今もこうして思い悩む事もなかった。
「これが惚れた側の弱みって奴なのかしら…」
「どうした上野、一人でブツブツ言って」
「…えっ?」
いつの間にか、拓斗が隣にいた。…え?!いつ来た!?
「…上野?」
「えっと…な、何?」
「いや、どうしたのかなって」
彼はそう言い、私の顔を見つめている。私は目を逸らそうにも逸らせられなかった。まるで何かに引き込まれるように
「!…さ、さっさと教室に戻るぞ」
「…っ!そ、そうね!戻りましょ…」
――――――――――――――――――――――――――
私たちは少しぎこちない空気の中、クラスに戻った。
その道中、拓斗を見てると彼の顔が少し赤かった。少しは意識して貰えたのかしら?ふふ、そうだとちょっと嬉しい。
「ふふっ…なんか良いわね」
「何が?」
「こうやって、教室戻るの…」
「一応確認だが、俺達は別に付き合ってねえぞ?」
「…分かってるわよ、それぐらい」
…分かってる、そんな事言われなくても分かってる。
でも今だけは、許して欲しい。彼の隣に別の子が居るようになるまでは…
私は無意識に彼の制服を掴んでた。
―まさか私たち以外の誰かに見られてるとは思わず
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