第3話
俺と上野は今、廊下にいる。上野が落ち着かない様子だ。
俺の顔をちらりと見たり、目が合えば目を逸らしたりの繰り返し。流石にこのままは不味いと思い、俺は話を切り出した。
「それで、話ってなんだ?」
「芝崎は…その……す、好きな人とか…い、居たりするのかしら…?」
彼女はそう尋ねてきた。いきなり好きな人と言われても、俺にはそういった人はいないので、居ないと答えた。
「そ、そう………良かった」
最後に何か呟いたのだろうか?上手く聞き取れなかった。
すると上野が、真剣な眼差しで此方を見ながら
「……なの」
「…はい?」
「私…あなたの事が……す、好き…なの」
(…は?今なんて?俺の事が好き…?)
一瞬だけ時間が止まった。時間にして数十秒だが、何分か止まった感覚。余りにも突然の事に、ボーッとしていたら
「私はあなたの事が、異性として、一人の男性として……す、好き…なの…」
上野は顔を真っ赤にしながら、俺にそう訴えた。
俺は上野の事を、友人としか見ていなかった。あと今まで恋愛に無縁だったせいもあってか、好きという気持ちが分からなかった。
でも彼女の本気は伝わってきた。本当に俺の事を想っているという気持ちは…
「…上野の気持ちは嬉しい、正直ビックリした」
「!…じゃあ―」
「でもごめん…俺、好きって感覚が分かんないんだ…」
そう言いながら俺は俯いた。
俯いてた俺の顔に右手が添えられた、上野の手だ。彼女は微笑みながら俺に向かってこう言った。
「なら、私が貴方を必ず振り向かせて見せるわ」
「…そうか」
「えぇ…あと急で申し訳ないんだけど連絡先の交換、しましょ?」
そう言われて俺は頷き、胸ポケットからスマホを取り出してお互いの連絡先を交換した。
交換が終わった後、上野は上機嫌で教室へ戻っていった。
――――――――――――――――――――――――――
上野の告白から少し経ち、俺と悠衣は自宅に帰宅していた。勿論悠衣は、相変わらず俺に甘えてくる。
帰宅してからちょっとした後、俺と悠衣は制服から普段着に着替えるため、それぞれの部屋に戻る。と同時にスマホがブルッと震えた。上野だ。
『もう家?』
『うん、そっちも?』
『えぇ』
―俺たちは十九時頃までずっと、メッセージを送り合っていた。ドアの向こうから悠衣の声がした。
「にぃに、ご飯出来たから一緒に食べよー」
「んー」
「私ちゃんと言ったからね?早く来てよ」
そう言って、悠衣はリビングに戻っていった。
俺はスマホを机の上に置き、充電器を差して部屋を後にした。上野って意外と乙女なんだな、なんて思いながら
拓斗が夕食を摂っている間、誰もいない自室に置いたスマホから通知音が鳴り響く。そのディスプレイにはこう表示されていた。
『明日私の事、名前で読んで』―と。
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