第5話 魔法の手
私は
苦手だった英語も克服して、入試の成績は学年で首席になった。
その時の
もちろん、本人を呼ぶ時はちゃんと「お母さん。」て呼ぶよ。私はバカ娘じゃありませんから。
「ねぇリオ。今日は見に来てくれる?」
話しかけて来たのは、クラスメイトの
「ごめん…。今日は私が夕飯の当番だから…。」
ついでに仕事で疲れた涼子に、夕飯を あ〜ん してあげたいんだ。
「そうかぁ…。お母さん今日は遅番かぁ…。」
「うん。ごめんね。」
「いいよ。その代わり、日曜日はちゃんと見に来てよ。」
「了解しました。」
「でもさぁ。いつも思うんだけど、リオもリオのお母さんも美人だよね。」
「ふふ。ありがとう。でも私よりも美梨の方が美人だよ。って言うか美梨は
「本当? じゃあ私達ってお似合いなんじゃ無い? 付き合っちゃおうか!」
「あはは。そうだね。」
美梨。いつも誘ってくれているのに、ごめんね…。って言うか、どうしたんだろ。複雑な顔をしているけど…。
ちなみに美梨は
身長が170センチを超えているだけではなく。シュートの正確性とボールを持った時の動きが、どの部員よりも凄い。そしてルックスも良いので、男子のみならず、女子からも人気だ。いや、大人気だ。
この前なんて、3年生の女子から告られたらしい…。すごいぞ美梨!
そんな人気者なのに、美梨はいつも私の事を気にかけてくれている。なんて言ったって、私はコミュ障なのだ。
クラスではういている私。休み時間はだいたい本を読んでいる。最近は
そんな私を見て、クラスの男子は私の事を魔女と呼ぶ。まったく、思春期の男子はバカが多くて困る…。
でも、男子がそう言って私をからかうと、いつも美梨が私を助けてくれる。美梨は初めて出来た友達。大切にしたい…。
🏫
私は斉木
子供は娘が1人。名前を里緒奈といい16歳の高校1年生。幸運な事に、優秀な成績のため、学費が免除となった。本っ当に良い子に育ってくれた。ある事を除けばだけど…。
そして今日は私の仕事が遅番の日。そんな時は毎回、里緒奈が夕飯を作ってくれている。しかも手の込んだ夕飯だ。とても嬉しい、がその反面、とても心配な事もある。なんて言ったって火を使うのだから…。
心配性な私は、ガスをやめ、
ちなみに娘だが、中学生の頃から、暇さえあれば机に向かっている。部活は生徒会に入り、会計を担当していた。当初、生徒会長に推薦をされたらしいが、勉強を優先したいと言う事で、辞退したらしい。
本人にその事を聞くと、
「だって試験でいい成績になれば、お母さんが嬉しそうにしてくれるから。」
と言う。まぁ確かに嬉しいけど…。
「私はお母さんの笑顔が大好きなんだ。だから友達よりも部活よりも勉強を選ぶの。」
と言われた時は、さすがに危機感を感じた…。
学生なんだから、友達とネズミーランドや水族館。コンサートや映画などに行ってもらいたいと思う。高校に入学をしてからはどうなんだろう…。
里緒奈からは、友人らしい名は美梨ちゃんと言う名前しか聞いたことがない。その子は友達なのだろうか? うちの子と仲良くしてくれているのだろうか? 心配だ…。
🚌
お米を研ぎ、炊飯器のタイマーを19:00にセットする。
発泡酒は朝のうちに入れておいたから、確実に冷えている。
今日はサワークリームで味付けをした根菜のサラダ。
メインは鶏のムネ肉を使った唐揚げ。ムネ肉だからカロリーは多少、控え目かな?
時計の針は18:30。
よし! お料理のスタートだ!
ジャガイモの皮をピーラーを使い丁寧に
そのジャガイモを小さめにカットして、耐熱ボールに入れる。
レンジでチンしている間に、食パンのミミと乾燥バジルの葉。あと粉チーズを少々入れて、スライサーで
そろそろフライヤーの用意だ。
160℃に設定をして、鶏肉は素揚げにする。
私が夕飯の
ガチャ…。
ガチャ…。
「ただいまぁ。」
涼子だ!
「お帰り! お疲れ、お母さん!」
涼子に抱きつく私。
「ちょっと里緒奈。フライヤーやっているんでしょ? ちゃんとキッチンにいてちょうだいね。」
「うん。でも、もうちょっとだけ…。」
私は涼子に抱き付いたままだ…。ママだけに…。
「はい。もう良いでしょ? お母さんも手伝うから…。」
涼子は照れながら、自分のウエストに巻き付く私の両腕を 優しく握りしめ、私を見る。
もぉ涼子、大好き!
部屋着に着替えキッチンに来る涼子。
「ねえ里緒奈? この粉は何に使うの?」
私が先ほど作った、唐揚げにかける、ふりかけを見て涼子が聞いて来た。
「これはね。唐揚げにかけるの。素揚げにしたから、これで味付け。」
「へぇ、すごいね。どこで覚えるの?」
「美梨が教えてくれたんだよ。」
おおぉ。噂の美梨ちゃん…。噂をしているのは私だけだけど…。
「里緒奈は美梨ちゃんって子と仲がいいの?」
「うん。今日ね、お母さんの事を美人だって言っていたよ。」
「あらぁ。いい子ねぇ。」
「今度の日曜日に女バスが練習試合をするから見に行くんだ。お母さんも一緒に行こうよ!」
「いやいや…。お母さんが行ったら、ドン引きでしょう…。」
「なんで?」
「なんでって…。」
まったくこの子は…。
「別にいいじゃない? 帰りに買い物とかすれば、私もお手伝いできるよ。」
「そう言う事じゃなくて、美梨ちゃんとお出かけしたら? 試合に勝ったら、おめでとうって言ったり、負けたら残念だったね。って励ましてあげたり。」
ふくれっツラで私を見る里緒奈。
「お母さんの意地悪…。お母さんと一緒にいたいのに…。」
もぉ…。この子はなんで…。
🍴
テーブルに並べられる、盛り付けのされたお皿たち。
私は涼子のグラスに発泡酒を注いであげる。
涼子は私のグラスに冷たいお茶を注ぐ。
「せーの。いただきまーす。とカンパーイ。」
夕食の際はいつも声を合わせる。
涼子は発泡酒を。私はお茶を一口飲み、食べ始める。
「ねえお母さん。お酒って美味しい?」
「一口飲んでみる?」
「親が
「それもそうね。」
2人で肩をすくめる。
「はい。お母さん、あ〜ん。」
私が涼子に唐揚げをあげると、涼子も私の真似をする。
「それじゃ里緒奈も、あ〜ん。」
「美味しいね。」
涼子が言ってくれる。良かった! 今夜のオカズも大成功だ!
そんな中、お母さんが意を決したように、私に聞いて来た。
「ところでさ。里緒奈は好きな男の子はいないの?」
「私はお母さんが好き。お母さんの事が大好き。」
即答!?
「いや。そう言う事じゃなくてね。クラスにさ、イケメンとかいないの?」
「私はお母さん以外は嫌なの。」
即答パート2!!
「そ、そうなの…。」
私の返答に首を
「どうしたのお母さん?何か悩みでもあるの?」
あんたのそのマザコン属性だよ!
「そうね…。悩みって言えば悩みかな…。」
「ねぇお母さん。明日は休みだから、ヤッパもらう。」
もらう?
何を?
と考える私をよそに、里緒奈は私のグラスを奪い、発泡酒に唇を当てた!
「うぅ…。臭い…。無理、口の中に入れられない…。」
よ、良かった…。と安心する母、涼子であった、が!
「と言うのはうっそーん!」
里緒奈の喉が、ゴクリと言う。
「苦〜い…。ヒック…。」
里緒奈はそう言って、顔を真っ赤にしている。
「ちょっと里緒奈!大丈夫?」
私は里緒奈の隣に座り、急いでお茶を飲ませた。
「ゴクリ…。」
お茶を飲み、ニヤける里緒奈。
「里緒奈?」
「なんだか、ホワーンとするよ。」
あぁ…。もうこの子は…。
「お母さん。」
「何?」
「チュ。」
私の頬を両手で押さえ、私にキスをする里緒奈…。
ちょっ!? 待っ!?
「えへへ〜。」
「えへへ〜。じゃないの!まったく!」
「えへへ〜。もう一回。」
「もう一回は無い! ソファーで少し横になりなさい!」
「連れてってぇ〜。」
と甘えた声で言いながらも、その場で寝てしまった里緒奈。
まったく…。
☀️
翌朝…。
ヤバい…。
記憶がハッキリとあるのですが…。
涼子とキスしちゃった…。
怒っているかな…。
いや。子供の頃はいつもしてたし?
16歳なんて、まだ子供だし?
あははは…。
ハァ…。8時か…。
美梨の試合、見に行かなきゃ…。
そんな事を考えていると、私の部屋のドアがノックされた。
「里緒奈、起きてる? 学校に行くんでしょ?」
ドアが開く…。
同時に布団をかぶる私…。
「さあ起きて。」
涼子はそう言って部屋のカーテンを開ける。
「里緒奈。」
涼子が優しい声で、私を呼ぶ。
なのに返事ができない私って…。
「ねえ里緒奈。あなたのファーストキス。お母さんがもらちゃったね。」
ヤバい…。泣きそう…。てか、すでに涙が出ているんだけど…。
「あなたの大切な物を 最初にお母さんにくれてありがとう。」
涼子のその一言で、私はベッドを飛び出した。
涼子に抱きつく私。
「お母さん。キスしていい?」
「はいはい。」
涼子は私の頭を撫でながら返事をしてくれた。
「もう一回いい?」
「はいはい。」
涼子の手は、優しく私を包む。
さっきまで悩んでいたのが、嘘みたいだ…。
心がトキメク魔法の手…。
「お母さん、大好き。」
「はいはい。お母さんも里緒奈が大好きよ。」
「お母さん、次は舌を入れてもいい?」
「ハァ? 調子に・の・る・な!」
ぺちん!
私の頭を叩く手も優しい涼子…。
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