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バンプオブチキンで一番好きなアルバム「FLAME VAIN」も、何枚も持っていたアルバム、シングル盤も、サンボマスターの「新しき日本語ロックの道と光」も、姉ちゃんからもらった、アジアンカンフージェネレーション、ラッドウィンプス、レミオロメン、ピロウズ、バックホーンのCDも、高野先生が誕生日に僕にプレゼントでくれた、フジファブリック、おとぎ話のCDも、一昨日姉ちゃんから受け取ったばかりの、名前も知らない誰かの生活とか夢とか不安とかいろんなもんが詰まったCDも、ついこの間買ったばかりの、バンプオブチキンの新譜も、全部、ぜんぶ僕のバックからこぼれ落ちた。
バックは紙ぺらみたいに軽くなった。中に手を入れて、掻きまわして、何も無いことを確認してから、仕上げにとりかかる。
音楽との決別。
イヤホンをはずそうとして、コードに手をかけた。ちょうど、流れていた曲が終わり、次の曲のイントロが流れた。ドラムがシンバルでリズムをとる。手が止まった。
バトルクライ。
気づいてしまった。
足の力が抜けた。手すりにすがりながら、その場に崩れ落ちる。イヤホンがとれた。
カモメの鳴く声、潮の香り、波の音。少しだけ冷たい風が肌をなでる。晴れ渡った空は清々しくて嫌味で、岩肌の下にある無数のCDは、波にさらわれながら、僕を咎めるように太陽光をチラチラと反射してきた。大きな後悔の波が僕を飲み込んで、同時に、CDは海の底に消えていった。
ひゅう、と喉が鳴って、次の瞬間には大声で泣いていた。そうでもしなきゃ狂いそうだった。ひょっとしたら、もう、オカシクなっているのかもしれない。
こんなに声をあげて、こんなに涙を流して泣いているのに、頭は冷えていく。息を切らして嗚咽を漏らしながら、いつもよりずっと冷静な頭で思った。
まるで身投げだ。
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