28
バンプオブチキン、アジアンカンフージェネレーション、ラッドウィンプス、レミオロメン他。それらのアーティストを僕に勧めたのは、梶原の姉ちゃん、アユミさんだった。
中学校から高校に上がる春休み。梶原の家に遊びに行っていると、アユミさんがひょっこりと梶原の部屋に顔を出した。
暇だったんだろう。大学への進学も決まり、引っ越しの準備も終えたらしいアユミさんは、ゲームでもしようよ、と、僕たちを誘いにきたのだ。
「ねえ、いいじゃん。一緒に人生ゲームしようよ」
「はあ、めんどくせえし。一人でやれよ」
「一人で人生ゲームするほど寂しい女じゃないよ。ほら、友達も一緒にさあ」
僕はそれまで梶原の姉ちゃんと話したことなんて無かったから、少し年上の女の人と話すということに、すごく緊張していた。ええと、と戸惑いながら二人を交互に見ていると、アユミさんが「あっ」と声をあげて、僕を指さした。正確には、僕の持っていたCDを。
「それ、サンボマスターのアルバムでしょ? サンボ好きなの? カッコいいよね」
突然言われて、驚きながらも、父親以外に、サンボマスターをカッコいいと言う人に初めて会って、僕は感動していた。なんとか絞り出すように、どもりながら、「ら、ライブにも行きました」と告げる。
「マジで!? ちょっと君、お話しよう。弟よ、残念だけど人生ゲームは中止だ」
ドラマの台詞のような口調が面白くて、緊張がほぐれた。僕はライブの思い出とか父親のこととかを話して、アユミさんはそれを興味深そうにあいづちを打ちながら聞いた。夕方帰る時、アユミさんはお礼にとオススメのCDを貸してくれた。バンプにラッドにアジカンにレミオロメン。今思うと、中高生の好きそうなバンドばかりだ。僕はそこでしっかり、音楽にハマらされてしまった。
次の日、僕はCDを返しにいって、アユミさんとどれがよかったとか、これはいまいちだったとかって話をした。帰る時、アユミさんはまたCDを貸してくれて、また明日ね、と言った。それから僕は、毎日のように梶原の家に遊びに行った。
「そのアユミさんっての、なんか聞きなれないから、姉ちゃんでいいよ」
何回目か遊びに行った時、アユミさんにそう言われた。なんだか、そっちの方が恥ずかしかったけど、僕はアユミさんのことを、姉ちゃんと呼ぶようになった。一人っ子だったから、呼び慣れてくるとすごく嬉しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます